実戦初登板で最速154キロ
球界の未来を担う逸材が、ついにベールを脱いだ。6月20日、ヤクルトのドラフト1位ルーキー・奥川恭伸が、二軍の戸田球場で行われたイースタン・リーグ西武戦でプロ初の実戦マウンドに登った。
本来は前日19日に登板予定が雨天中止でスライド。池山隆寛二軍監督の初陣となったこの試合で“開幕投手”を任された期待の右腕は、先頭の西武・西川への初球にいきなり154キロ(自己最速タイ)のストレートを投げ込み、空振りを奪うと「最初に空振りを取れたので、きょうは良かったかなと思います」と、“プロ第1球目”を振り返った。
西川は遊飛、続く2番・綱島を見逃し三振。3番の高木には149キロのストレートで空振り三振を奪い、2者連続三振。打者3人をパーフェクトに抑える上々デビューを飾った。
「変化球の方もしっかり投げられるように」
“デビュー戦”は1イニングのみで打者3人に14球を投げ、無安打無失点。奥川と言えばストレートの速さに注目が集まるが、本人は冷静に自身の投球を見つめている。
「きょうは真っすぐ主体だったんですけど、変化球も真っすぐと同じようにカウントを取れたり、空振りを取れたりするような投球がこれからできないといけないと思っているので、変化球の方もしっかり投げられるように練習していきたいです」
変化球はスライダー、フォークに加え、3番の高木の初球と2球目にはツーシームを投げたが「高めに半速球がいってしまい、まだまだその精度ではダメだと思うので、すべてのボールをこれからもっといいボールにしていけるように練習に取り組んでいきたい」とコメントした。
ヤクルトに入団後、1月の新人合同自主トレから多くのファンの視線を集めてきた。右肘の軽い炎症でノースロー調整を余儀なくされ、キャンプは二軍スタートとなった。それでも、焦ることなく段階を踏んできた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が延期となったが、ステイホーム期間も「YouTubeで野球の動画を見ていました。投手の動画を見て、どういう使い方、体の扱い方をしているのかなとか、ちょっと参考にしたいなと思って」と、グラウンド外でも野球への探求心を忘れなかった。
「強化ということをテーマに」
19歳は「一軍のマウンドで勝ちたいなという思いが強い」と意欲を示す。一軍デビューへ向けてファンの期待も高まるが、奥川本人は自分自身を見失わずに前へ進んでいく。
「きょうは良かったんですけど、これをしっかり継続していけるように、まだまだ上を向いてやらないといけないので、しっかり調整じゃなくて強化ということをテーマに置いてやっていきたいです」
奥川のプロ1年目は、まだ「序章」に過ぎない。一軍の舞台で、さらにレベルアップした姿を見せてくれるはずだ。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)