リーグ戦首位から交流戦最下位へ…
開幕から快調に勝ち星を重ねていた広島が絶不調だ。
交流戦前の成績は阪神と4勝4敗でタイの成績だった以外、すべてのチームに勝ち越して貯金は二桁の11。巨人が貯金3でもたついていたから、首位はしばらく不動かと思われていた。新人を含めた若手と外国人がうまく絡み合い、悲願のVに向けてひた走るはずだったのだが……。
しかし、交流戦に入ると5勝15敗とまさかの急降下(6月16日現在、交流戦最下位、セ・リーグ2位)。6月3日~14日はどん底の9連敗と、悲壮感すら漂う状況だ。特に酷かったのが、3日、4日、6日~8日の5試合で計50失点という投壊ぶり。その打ち込まれっぷりを見ていると、まるで何か物悲しいドラマを見ているようにも思えたほどである。
投壊だけでなく、貧打……その上、故障者続出では、勝てる気もしない。チーム状態が落ちて負けが混むことは、長いシーズンにおいてどのチームにもあって当然だし、驚くことでもない。にしても、今の状態はさすがに厳しい。
この惨劇、理由は投壊が最大の要因と言われているが、それは確かに間違いないだろう。でも、広島が一番得意としてきた“伝統”を忘れている気がしてならない。
足にスランプはない 走る野球でスランプを脱する
「打ち勝つ」「投げ勝つ」という、いわゆる“王道の野球”で勝ってきた今季の広島。昨季におけるCS出場での自信が、そのままの形で最高の結果として勝ちにつながってきたと見ていい。だが、交流戦に入るとチーム状態が下降した。いわゆる、長いシーズンに必ずある、“悪い波”が来たということだろう。予期せぬ波だったにせよ、そこで何か工夫があってもよかったのではないか? という思いが湧いてくる。それでも、開幕からの戦い方を変えなかったところに、この泥沼状態の要因がある。
昨季を振り返ってみれば、リーグ1位の112盗塁を記録したのが広島だった。チーム打率は.248(リーグ5位)だから、数字から見れば貧打を足で補っていたことは見当がつく。まさに、それこそ広島が古くから持ち味としてきた伝統の野球ではないか。交流戦期間の盗塁数は11個で、これは12球団中9位(1位はソフトバンクの24個)。やはり走れていない。打てなければ足で相手を揺さぶって、泥臭く、しつこく1点を取りにいく。それが広島の本来のスタイルだ。
「打ち勝つ」「投げ勝つ」の自信を持つことは何ら問題ない。でも、それが慢心になってしまっては、せっかくの自信もムダになるだけ。忘れかけた、足でかき回す野球をもう一度見つめなおして、“らしい野球”で窮地を打破してほしい。
文・岩川悟(いわかわ・さとる)