復活の兆しを見せるかつての首位打者
今季15年目を迎えるロッテのベテラン・角中勝也が好調をキープしている。
開幕スタメンこそ逃したが、自慢のバットコントロールはまだまだ健在だ。開幕当初は代打中心の起用だったが、4月終盤からはスタメンに名を連ねている。ここまで打席数こそ少ないものの、27試合の出場で54打数18安打。打率は「.333」を記録している(2021年5月12日終了時点)。
かつて首位打者を2度獲得したバットマンも、直近4年は打率3割を超えることはなく、そのシュアな打撃に陰りが見えてきた感があった。しかし、今年で33歳とまだ老け込むには早い。右に左にへと打ち返す好調な打撃の姿を観ていると、それこそが角中本来のものであると言っていいだろう。
そんな角中には、あるバイオリズムが存在する。それは、夏季オリンピックイヤーにおける打撃覚醒だ。
キャリアハイの打率はいずれもオリンピックイヤー
ここでは、各オリンピック開催年と角中がプロ入りしてからの夏季オリンピックイヤーにおける打撃成績を見ていく。
▼ 2008年(北京五輪)
開幕時点の年齢:20歳(プロ2年目)
シーズン成績:10試合 打率.111 1本塁打 1打点
※ファーム成績:73試合 打率.285 2本塁打 28打点
▼ 2012年(ロンドン五輪)
開幕時点の年齢:24歳(プロ6年目)
シーズン成績:128試合 打率.312 3本塁打 61打点
※首位打者獲得、ベストナイン
▼ 2016年(リオ五輪)
開幕時点の年齢:28歳(プロ10年目)
シーズン成績:143試合 打率.339 8本塁打 69打点
※首位打者、最多安打獲得、ベストナイン
2度の首位打者をはじめ、タイトルを獲得したのは夏季オリンピックイヤーであり、シーズンを通じて打率3割を超えたのも2012年と2016年の2回だけなので、角中とオリンピックイヤーの相性の良さが際立つ。ちなみに本塁打と打点も、それぞれキャリアハイを更新している。
過去の例にならえば、本来オリンピックイヤーだった昨年(2020年)も数字を出していそうだが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延もあり、オリンピックは1年延期に。角中の成績は、その延期に合わせるかのように? 「.244」と低調なものに終わっている。
現在、東京をはじめとした複数の都道府県で緊急事態宣言の真っただ中にあり、その範囲は全国へと拡大傾向にある。よって、オリンピック開催の可否は不透明なままとなっているが、この不思議なバイオリズムによって角中のバットの勢いが止まらなければ、ロッテの好調は続いていくだろう。
まさに「オリンピックイヤー男」――。角中のバットに注目だ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)