第20回:後半戦「投打のキーマン」は誰に
ヤクルトが前半戦83試合を42勝32敗9分けのリーグ3位という成績で終えた。貯金は「10」。勝ち越して前半戦をターンするのは2011年以来10年ぶりのことだ。
前半戦最後のカードとなった東京ドームの巨人戦では打線が爆発。13日には3番・山田哲人が3ラン、4番・村上宗隆が2ホーマー。その後に続くオスナがソロ、吉田大成がプロ初本塁打、サンタナがソロ2発を放ち、球団タイ記録となる1試合7本塁打を記録。14安打14得点で快勝した。翌14日も、11得点を奪い2連勝を飾っている。
前半戦を終了した時点でチーム得点数はリーグトップの366得点。特に村上の後を打つ5番・オスナが打撃好調だ。7月は11試合で打率.442、3本塁打、9打点をマークしている。
高津臣吾監督はオスナについて「必然的にランナーを置いての打席が増えてくるので、ランナーを還すバッティングというのを期待しています。オスナは大きいのもありますけど、しっかり四球とか選ぶこともできるので、すごく打線の中ではキーのひとりだと思います」と、キーマンのひとりとして名を挙げた。
昨年からの課題だった村上の後を任せられる5番に頼もしい助っ人が座り、打線は確実に厚みを増した。1番の塩見泰隆から4番の村上までは不動のオーダーになりつつあるだけに、オスナの存在は相手チームにとって脅威だ。
ここまで強力打線を形成できているが、指揮官は「もっともっといい形をつくれるようにしていきたい」と、後半戦へ向けて慢心することはない。
昨年に比べレベルアップしたのは打線だけではない。高津監督は一番の課題だった投手陣について触れ「先発ピッチャーが踏ん張ってみたり、リリーフが頑張ってみたり、投手力というところは昨年よりは多少良くなっているのかなという風には思います」と、一定の評価を口にした。
「大きな連敗をしなかったというのは、打線はもちろんですけど、先発が長いイニングを投げてゲームをつくるとか引っ張るとか、誰か週の6試合の中のひとりでもできるようになってきているのかなという感じはします」
今季2完投でチームトップの7勝を挙げている小川泰弘が中心となって先発陣を支え、守護神にはマクガフ、そして、清水昇や今野龍太、坂本光士郎らリリーフ陣の投球が光った。
また、石山泰稚は不調で二軍落ちも経験したが、7月10日に一軍復帰登板を果たして以降3試合で無失点投球を続け、後半戦でさらなる巻き返しが期待される。
2年目・奥川恭伸、後半戦にも期待
前半戦で確かな手応えを得た高津監督だが、上位の巨人と阪神を追い抜くためには、投打ともにさらに磨きをかけることを忘れてはいない。
「(前半戦は)うまくいったことも、もちろんたくさんあったし、まだまだなところもたくさんある。まだ前半が終わっただけなので、今すぐに気持ちを後半に切り替えているわけではないですけど、やはり残り60試合というのはすごく大事になってくると思います。僕たちらしく、元気で明るく前向きにという姿勢はしっかり持って後半に挑みたいなと思っています」
前半戦最終戦を終え、指揮官が「大事になってくる」と話した残り60試合をどう戦い抜くか――。
「打」のキーマンのひとりがオスナならば、「投」のキーマンのひとりとして挙げられるのが、2年目の奥川恭伸だ。
前半戦で4勝(2敗)をマークした「未来のエース」が後半戦でどれだけ勝ち星を積み上げることができるか。まさにカギを握っているといっていい。
前半戦は10試合に登板し、中10日以上の間隔を空けてマウンドに上がってきた奥川。7月1日の阪神戦はプロ入り後初となる甲子園に凱旋登板。白星こそつかなかったが7回1失点と好投した。
さらに、前半戦最後のマウンドが巨人戦初登板で初勝利。奥川は試合後「ここまで順調に投げることができていますし、前半戦勝って終わりたいなと思っていたので、今日の勝ちというのは本当に嬉しい。後半戦もしっかりチームの力になれるように頑張りたいと思います」と、言葉に力を込めた。
投げるたびに成長を感じさせる20歳の右腕は、上位追撃のための欠かせない戦力となっている。高津監督は奥川に対して「ある程度の形にはなってきたかなと。前半戦はこれでいい成長をしてきたと思うので、後半、そして、また来年以降につながる登板を重ねていってほしいなと思います」と期待を寄せた。
首位の阪神に2.5ゲーム差と、逆転優勝を狙える位置につけているヤクルト。後半戦へ向けて、17日から埼玉の戸田球場で全体練習を再開した。そして、27日から始まるエキシビションマッチには、オスナ、サンタナの両外国人に加え、青木宣親らベテランの選手も帯同する予定となっている。
2年連続の最下位から飛躍を遂げたツバメたちの逆襲はまだ終わらない。残り60試合。勝負の後半戦へ挑む。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)