前半戦5位からの逆襲を見据えて…
プロ野球のペナントレースはオールスターゲームを境に約1カ月の中断期間に突入。
7月27日には各地で非公式試合「2021プロ野球エキシビションマッチ」が幕を開けた。
このエキシビションマッチを有効活用できるかは、後半戦の行方を占ううえでも重要である。
前半戦を5位で終えた広島にとっては、新たな戦力を見極める場としたいところだろう。
そこで今回は、エキシビションマッチで注目すべき若手選手を取り上げてみたい。
打線のスイッチを入れる1・2番候補
前半戦のチーム打率はリーグ2位の.2606と、上位の成績を残していた広島。しかし、チーム得点は298でリーグ5位と、出塁がなかなか得点に直結しなかった。
本来であれば長打力で停滞感を打開したいところだが、チーム本塁打59もリーグ5番目の数字。新外国人のケビン・クロンが不振で二軍調整となっており、長打力に浮上のキッカケを見出すのは現実的ではない。
そこで攻撃面のカギを握るのは、春季キャンプから重点を置いてきた“積極走塁”である。
前半戦の41盗塁はリーグ4位タイ。佐々岡真司監督も「盗塁数も増えていないし、走塁ミスや牽制死など、いろいろな失敗があった。走る回数よりも確率を高くしないといけない」と語り、走塁面の改善をリーグ戦再開までのテーマに掲げている。
走塁から流れを変えられる選手といえば、二軍にうってつけの選手がいる。高卒3年目の21歳・羽月隆太郎だ。
前半戦は34試合の出場に留まりながら、鈴木誠也と並ぶチームトップの6盗塁をマーク。出場機会が減少したことで6月中旬に二軍降格となったものの、決して首脳陣からの評価が下がったわけではない。
開幕は二軍スタートながら、ウエスタンで10試合10盗塁という圧倒的な走力を見せて4月上旬に一軍昇格。同月下旬からは菊池涼介と1・2番コンビを組んで相手をかき回していただけに、5月下旬に新型コロナウイルスに感染して戦線離脱、そこから調子を落としたのは不運だった。
コロナ感染から時間が経ったことで、筋肉量なども徐々に戻ってきたことだろう。ウエスタン・リーグでの7月の月間成績は出場10試合で打率.243(37-9)、盗塁は3つ。打撃の状態さえ上がってくれば、すぐにでも一軍から声がかかるはずだ。
チームは前半戦の終盤から3番~6番を小園海斗、鈴木誠也、坂倉将吾、林晃汰の順で固定。次は1・2番の適任者を探すことが焦点となっているだけに、上位を担うことができる羽月が戻ってくれば競争の活性化も期待できる。
ただし、二軍戦も同時並行で行われていることで、大量に若手を呼ぶことができないというのはもどかしいところ。現在の打線に俊足の羽月が加われば、どのような化学反応が起きるのか。エキシビションマッチのうちに見てみたい。
ブルペンの新たな矢
つづいて投手陣を見ると、前半戦のうちに先発5枚が固まったのは大きい。6枚目までを揃えることが理想ではあるが、それは上位のチームであってもかんたんではない。エキシビションマッチで注目すべきは、“救援陣の再整備”だろう。
前半戦はプロ1年目から抑えに君臨した栗林良吏が奮闘。その一方で、栗林につなぐ形が定まらないままだった。
しかし、光明はある。ヘロニモ・フランスアが右ひざの手術から復帰しており、本調子に近づいて行けば安心して終盤を任せることができる。また、ロベルト・コルニエルも、接戦で本来の力を発揮することができれば、勝ち継投の一人として固定されるだろう。
そしてこの勝ちパターン争いに、若手からの参戦も期待したいところ。筆頭候補となるのが、大卒3年目・24歳の島内颯太郎である。
前半戦は16試合の登板に終わったものの、7月9日のヤクルト戦では1点リードの8回からマウンドに登り、三者凡退に抑えて今季初ホールドを記録。接戦での好投で、首脳陣の評価を高めて前半戦を終えた。
最速157キロを誇る直球の威力は申し分ないだけに、今後は勝負どころでも乱れない“制球力”が重要になってくる。エキシビションマッチとはいえ、終盤の経験を積むことは今後につながるはずだ。
首脳陣はこの期間に若手を積極的に起用していく方針を示している。リーグ戦再開をどのような立ち位置で各選手が迎えられるか…。若手にとっては、貴重なアピール期間になる。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)