失われた存在感を取り戻し2年ぶりの交流戦優勝に貢献
6月22日、ソフトバンクとの直接対決を制し、巨人が2年ぶり2度目の交流戦優勝を決めた。交流戦前、広島に4.5ゲーム差をつけられリーグ3位に甘んじていた昨年の覇者だが、交流戦を終えてみれば逆に広島に2.5ゲーム差をつけ首位に立った。
その立役者こそ亀井善行だ。2009年、1番右翼で開幕戦からスタメンで出場すると、中盤戦からは5番打者として定着。打率.290、25本塁打、71打点と、チームのリーグ優勝、日本一に大いに貢献した亀井だが、その後は度重なるけがや不振もあり、すっかり存在感を失っていた。
今年の沖縄キャンプ最終日前日、またもや亀井を悲劇が襲う。守備練習中に右手人さし指を骨折し、ファンからは「またか……」と、諦念の声が漏れた。しかし、この数年の逆境が亀井の心を変えていた。過去の輝きを追い続けていた男は、目の前の試練に真正面からぶつかっていくのである。
右手の手術を終えると、黙々とトレーニングと走り込みを続け体重は5キロ増加。速球に振り負けないスイングスピードと、力強いインパクトとを生む下半身を作り上げて、一軍の舞台へと帰ってきた。
苦境の中で取り組んだ内野守備がチームを救う?
その効果は復帰後すぐに表れる。5月31日のオリックス戦、0-0で迎えた延長12回。馬原孝浩の147キロ速球を振り抜いた打球は左中間スタンドに飛び込む決勝ホームランとなって、久しぶりに亀井の名前がスポーツ紙を賑わすことに。以降の活躍は周知の通り。交流戦成績は打率.356、3本塁打、10打点。しかも勝利打点は4と、無類の勝負強さを発揮した。2009年に、王貞治氏の球団記録に並ぶシーズン3サヨナラ本塁打を放った勝負強い男が完全復活を遂げたのである。
6月17日のオリックス戦からはついにクリーンアップの3番に名を連ね、萎縮するどころかますます勢いに乗っている。17〜18日のオリックス戦、21〜22日のソフトバンク戦と、交流戦優勝の行方を左右する大一番でいずれも2安打を記録。もはや手がつけられない状態だ。
注目すべきは打撃だけではない。6月4日のソフトバンク戦では一塁、二塁、右翼と守備位置を変え、内外野を守れるユーティリティーぶりを発揮。もともと外野守備力には定評がある亀井だが、出場機会を求めて内野守備にも取り組んできた経緯があるだけに、内野のレギュラー陣にいざということがあれば、亀井の存在価値はますます高まることになる。
“打の人”、というイメージが強い背番号9が、後半戦は、攻撃だけでなく守備でもチームを救うはずである。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)