白球つれづれ2022~第13回・開幕カードを勝ち越した西武の変身ぶり
注目度ナンバーワンのBIG BOSS新庄日本ハムはソフトバンク戦に開幕3連敗。オープン戦最下位のヤクルト、巨人は共に上々の滑り出し。ファンが一喜一憂する季節が今年もやってきた。
戦前の評論家による順位予想では、圧倒的に評価の低かった広島や西武が素晴らしい戦いを見せている。中でも昨年の覇者・オリックスに勝ち越した西武の変身ぶりに注目してみたい。
チームが大きく生まれ変わる要素とは?
第2戦ではドラフト1位ルーキー、隅田知一郎投手が“七色の変化球”を駆使してオリックス打線を翻弄、7回1安打無失点の快投で新人一番乗りの初先発初勝利を飾った。
続く第3戦は6点のビハインドを終盤に追い上げて、逆転勝利。日頃は冷静な辻発彦監督が「鳥肌の立つゲーム」と語ったように、長丁場のペナントレースを戦ううえで勢いと勇気をもたらす開幕戦となった。
まだ、3戦(楽天とロッテは2戦)、これで年間を占うには早計である。だが、その中にも前年との違いを見て取れることは出来る。各チームの「変身度」だ。
チャンピオンチームであるヤクルトやオリックスは昨年同様の戦いが出来れば当然強い。しかし、残る10球団には何らかのプラス材料が加わらなければ浮上は難しい。中でも前年、下位に沈んだチームには劇的な変革が必要となる。
チームが大きく生まれ変わる要素を大別すると、
①新人選手の活躍
②新外国人の当たり外れ
③それ以外の新戦力の台頭
④主力の復活
などが挙げられる。
これらの観点から12球団の開幕カードをチェックすると満点スタートを切ったのは西武だ。
前述の通り、チームに初勝利をもたらした隅田は期待に違わぬ即戦力ルーキー。球威、コントロール共に完成度の高い左腕は昨年の楽天・早川隆久投手を思わせる。その早川が9勝をマークしたように、二桁近い白星を積み上げたら確実にチームは変わる。
もう一人の即戦力ルーキーである佐藤隼輔投手も29日からの日本ハム戦に先発予定で、こちらも先発ローテに定着出来れば弱体と言われた投手陣が一変する可能性まである。
外国人選手の総入れ替えを断行したチームにあって、ブライアン・オグレディ選手が3戦連続安打で飛び出した。新戦力では6年目の鈴木将平選手が開幕レギュラーの座を掴み、オグレディと新1、2番を形成している。西武の泣き所は秋山翔吾選手がメジャー移籍後の上位打線のひ弱さだったが、ここが解消されれば、つながりが生まれる。
不振に苦しんだ主砲・山川がついに復調
そして変身の最後のピースが主砲・山川穂高選手の復活気配だ。
第2戦でオリックス・宮城大弥投手を攻略する1号3ラン、第3戦でも反撃の狼煙を上げる一発を含む3安打で森友哉選手の逆転打を呼び込んだ。かつての本塁打王も、この2年は極度の打撃不振に陥り、4番から外されることも多かったが、「どすこい男」が本塁打争いに戻ってくれば、驚異のレオ打線が復活する。
鈴木、オグレディの活躍で9番に回った源田壮亮選手が粘りに粘って四球を選び、“隠れ1番打者”の役割を果たす。オグレディの併殺崩しを狙った激しい走塁が、相手のミスを誘い逆転劇につながる。すべてが昨年にはなかった戦闘集団となっている。
昨年の開幕時には、山川や外崎修汰選手ら主力が故障で出遅れ、5月にはコロナ禍がチームに蔓延して夏場以降に失速、42年ぶりの最下位に沈んだ。雪辱を期す思いは強い。
もちろん、これから各チームともデータを洗い直して対策を練って来る。好調の選手がそのまま、突っ走れるわけでもない。それでも昨年と比べて最も変わり身の期待出来る兆しはある。
昨年のヤクルトやオリックスと同様に最下位からの逆襲はあるのだろうか?
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)