西武の「秋山」と言えば…
西武の秋山と言えば、あの栄光の黄金時代を支えた秋山幸二――。今シーズン、そんな球界の定説を変えようとしている男がいる。
西武ライオンズの背番号55、秋山翔吾である。走攻守三拍子揃った逸材として八戸大から10年ドラフト3位で西武入団。球団の新人外野手としては30年ぶりの開幕スタメンに抜擢され、1年目から110試合に出場。2年目には規定打席に到達し、打率.293を記録。ついでに「ライオンズのうなぎになれ!」と秋山のピースうなぎTシャツも絶賛発売。3年目には144試合にフル出場してゴールデングラブ賞を受賞した。
13年に台湾遠征を行った侍ジャパンメンバーにも選出され、高校時代からの彼女との遠距離恋愛を乗り越えゴールイン。公私ともに順調すぎるプロ生活だったが、昨年壁にぶち当たる。
開幕直後に深刻なスランプに陥り、打率.128で4月末に登録抹消。5月の復帰後は持ち直すも、最終的に打率.259、4本塁打と前年から大きく成績を落とした。
雪辱を期し、オフに右肘のクリーニング手術を受け臨んだ2015年シーズン。秋山はオープン戦から打率.459のハイアベレージで首位打者を獲得。ペナント開幕後も勢いそのままにレオの不動の核弾頭として猛打を振るっている。
3日現在、28試合で計46安打を放ち、すでに16度のマルチヒットを記録。打率.380、安打46、得点20と各部門トップ。46安打の内訳はレフト15本・センター11本・ライト15本・内野安打5と見事なまでの広角打法だ。
打者を評価する指標として近年ポピュラーなOPS(出塁率と長打率を足したもの)は.939を誇り、得点圏打率も.348と勝負強さを発揮。プロ入り以来苦手としていた左投手も、今季は30打数15安打の打率5割と打ち込んでいる。
気が早いかもしれないが、143試合換算すると年間230安打越えのハイペース。過去にNPBで年間200安打以上を記録したのはたったの5名。10年のマートン(阪神/214安打)、94年・イチロー(オリックス/210安打)、10年・青木宣親(ヤクルト/209安打)、10年・西岡剛(ロッテ/206安打)、07年・ラミレス(ヤクルト/204安打)。日本人選手3名は全員、後のメジャーリーガーである。
20数年前、秋山幸二は外国人選手たちから「メジャーに最も近い男」とリスペクトされた。もしかしたら近い将来、再び「日本人野手でメジャーに最も近いのは西武の秋山」、そう言われる時代が来るのかもしれない。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)