記念すべきプロ第1号はNPBホールド記録保持者から
中日の若き大砲・石川昂弥に「大きなあたり」が増えてきた。
地元・愛知の東邦高から2019年のドラフト1位で中日に入団し、今年で3年目。「7番・三塁」で初の開幕スタメンを勝ち取るなど、ブレイクに期待がかかったが、その歩みは順風満帆ではなかった。
開幕から3カードを終えた時点の打率は.143(28-4)。長打は1本もなかった。
しかし、4カード目の初戦となった4月5日のヤクルト戦でついに待望の一発が。昨季NPB新記録となる50ホールドを記録した清水昇からプロ初本塁打となる勝ち越し弾を放ち、勝利に大きく貢献した。
翌日は終盤のチャンスで代打を送られる悔しさも味わったが、3戦目には左中間スタンドに突き刺す第2号でリベンジ。二塁打も放ち、今季初のマルチ安打を記録している。
12日の阪神戦でも勝ち越し打を放つなど、4打数2安打1打点の活躍。これでようやく打率を2割に乗せた。
首脳陣の我慢が実り、徐々に一軍の水にも慣れてきたところだろう。ここからのさらなる飛躍に期待が膨らむ。
高卒生え抜きの20本塁打到達は2010年が最後
中日は広いバンテリンドームを本拠地としていることもあり、現役で2ケタ本塁打を記録している高卒の生え抜き選手というと、平田良介と堂上直倫、福田永将、高橋周平の4人だけしかいない。
いずれの選手も2ケタ本塁打の到達には年数を要しており、もっとも早く到達した平田で6年目。このなかで唯一ルーキーイヤーにプロ初本塁打を記録した高橋でも、初の2ケタ本塁打到達は7年目だった。福田は10年目で、堂上に至ってはなんと13年目となる。
よって、3年目の石川が2ケタ本塁打に到達すれば現役では最速となる計算だ。これは現在チームを率いる立浪和義監督が、3年目の1990年に11本塁打を記録して以来のスピード記録となる。
しかし、1990年の中日はバンテリンドーム(ナゴヤドーム)に移転する前で、ナゴヤ球場を本拠地としていた。当時のナゴヤ球場はバンテリンドームと比べて両翼が8.5メートル、中堅も約3メートル、フェンスは2メートル以上低かったため、バンテリンドームよりも本塁打は出やすい球場と言える。もし石川が2ケタ本塁打に到達すれば、本拠地が移転してからは初の快挙だ。
また、平田や堂上、福田に高橋も30本塁打はもちろん、20本塁打も未経験。中日生え抜きの高卒選手で20本塁打に到達したのは、現・打撃コーチの森野将彦氏が22本塁打を放った2010年まで遡らなければならない。これはセ・リーグ6球団ではもっとも遠ざかっていることになる。
石川のここまでの2本塁打の弾道を見る限り、立浪監督以となる高卒3年目での2ケタ本塁打到達、さらにはその先にある20本塁打も決して高望みではないように見える。
「主砲候補」から「主砲」になれるか。石川にとって試金石のシーズンとなる。