投手陣を支える左腕
3月25日のプロ野球開幕から1カ月半が経過。
開幕前から大きな注目を集めたBIGBOSS・新庄剛志新監督率いる日本ハムは、11勝24敗の最下位に沈んでいる。
ゴールデンウィーク期間中も2勝6敗と苦戦。勝率.314は両リーグで見てもワーストの数字だ。
本塁打こそリーグ最多の32本を記録しているものの、1試合平均得点は同4位「3.1」でつながりは欠いている状態。
そんな打線以上に深刻なのが投手陣で、チーム防御率はリーグで唯一4点台の「4.15」。例年ならそれほど悪くない数字にも見えるが、今季は4球団が2点台の防御率をマークしており、リーグ5位のオリックスでも3.30という極端な「投高打低」のシーズンだけに、投壊状態にあると言えるかもしれない。
そんな中、孤軍奮闘のはたらきを見せているのが左腕の加藤貴之である。
拓大紅陵高から新日鉄住金かずさマジックを経て、2015年のドラフト2位で日本ハムに入団すると、1年目から一軍に定着。先発と救援の両方で活躍を見せ、いきなり日本一も味わった。
2年目以降も先発を中心に、時にはショートスターターとして奮闘。決して派手な存在ではないが、チームに貢献してきた。
佐々木朗希、田中将大を抑えてリーグトップ
プロ6年目の昨季は自身初の規定投球回到達。ローテーションの中心的役割を期待されて迎えた今季は、3試合目の登板となった4月6日・ロッテ戦から5試合連続でクオリティースタート(6回以上自責点3以下)をマークしている。
特に圧巻だったのが、4月19日の楽天戦。初回から相手打者を手玉に取る芸術的な投球を見せ、打者29人に対してわずか90球での完封勝利を達成した。
試合後、加藤の“省エネ”パフォーマンスを「カドックス」と表現したのが新庄監督。メジャーでは100球未満での完封勝利を「マダックス」と呼んでおり、自身がメッツ時代に対戦したこともある殿堂入り右腕のグレッグ・マダックスをもじって快投を称えた。
一躍注目を浴びた「カドックス」だが、その精密機械ぶりは決して一時的なものではない。
今季は44回を投げ、与えた四球はわずかに2個。与四球率0.41はもちろん両リーグを通じてトップである。
さらに、奪三振数を与四球数で割った「K/BB」が17.50(35三振/2四球)。本家マダックス顔負けの驚異的な数字だ。
ちなみに、リーグ2位がロッテ・佐々木朗希の11.83(71三振/6四球)で、3位は楽天の田中将大(32三振/6四球)。従える2人の名前を見ても、その価値の高さがよく分かる。
苦しい投手陣を支える加藤は、このまま新生ファイターズのエースへと登り詰めることができるか。さらなる飛躍に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)