球界を席巻!?「平成の新人類」
懐かしの「新人類」――。30年程前の昭和61年、流行語部門の金賞に輝いた言葉だ。
表彰式にはプロ野球界から、当時西武ライオンズの清原和博、渡辺久信、工藤公康の3名が出席。これ以降、西武は名実共に黄金時代を迎えることになる。
そして2015年、球界では10代後半からハタチそこそこの若い選手たちが躍動している。
9日の阪神戦(甲子園)でプロ初の満塁アーチを放ったのは20歳の赤ヘル・鈴木誠也。3年目の外野手は今季21試合に出場し、打率.275、3本塁打、9打点。46打席しか立っていないにもかかわらず、右打ち野手としてはリーグトップタイの三塁打2本と脚力もある。
3年前のドラフト2位指名、当日に広島のスカウトが鈴木の母校である二松学舎大附高へ指名挨拶に行くと、学校には北海道と福岡のテレビ局が来ていたという。日本ハムとソフトバンクも上位候補として検討していた逸材だったが、ウエーバー順で広島が鈴木獲得に成功したわけだ。
昨季は36試合の出場ながらも打率.344を記録、11月の21Uワールドカップでは首位打者とベストナインに輝いた。次代のカープを担うプロスペクトは3年目のレギュラー奪取を狙う。
そして、パリーグ首位の西武ライオンズを牽引する活躍を見せているのが、19歳の森友哉である。ここまで全34試合で指名打者として出場。打率.325、7本塁打、20打点を記録し、OPS.941、二塁打12はリーグトップだ。
昨年3試合連続アーチを放った自慢の長打力にさらに磨きがかかり、このペースでシーズン20本塁打以上を記録すれば、高卒2年目の選手としては94年の松井秀喜(巨人)以来の快挙となる。
170センチ、80キロ。往年の門田博光を彷彿とさせる現代の小さな大打者。ただし、本職である捕手のポジションは炭谷銀仁朗が開幕から全試合でスタメンマスクを被り、チーム防御率3.08はリーグ2位と好調。来る26日に開幕する交流戦では、DH制度のないセ・リーグの本拠地の試合で森の起用法がどうなるのか、注目されるところだ。
これ以外にも、日本ハムのドラフト3位・浅間大基がデビュー戦から4試合連続安打という高卒ルーキーのタイ記録を樹立。DeNAの高卒2年目・関根大気もすでに31試合に出場し、外野の一角を担う。
さらに、パリーグ投手部門で3・4月の月間MVPに輝いたのは、開幕5連勝でいまやエースの風格すら漂わせるハタチの大谷翔平。彼らの活躍は、今後の有望な高校生選手の大学・社会人を経由しない、直のプロ入り活性化に繋がる可能性も高い。
10代から一軍でプレーすれば、20代後半までには海外FA権が取得できる。物心ついた時から、身近な目標としてメジャーリーグがあった94〜96年世代。今、野茂英雄の渡米前後に生まれた「平成の新人類」たちが、球界の新たなスタンダードを作ろうとしている。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)