神宮球場で、懐かしの「和製大砲」という言葉が復活しつつある。
セ・リーグでは09年から6年連続で助っ人選手が本塁打王を独占中。昨季はエルドレッド(広島)が37本で初のタイトル獲得。その前はバレンティン(ヤクルト)が3年連続本塁打王と一人勝ちだった。
日本人選手のホームランキングは08年、横浜時代の村田修一まで遡る。08年以降に中村剛也(西武)が5度に渡り本塁打王に輝いているパ・リーグとは対照的だ。
侍ジャパン不動の4番打者も中田翔(日本ハム)。今シーズンはその中村と中田がともに18本塁打でトップタイと激しくホームランキングの座を争っている。
そして、長年助っ人大砲の天下が続いたセ界にも異変が起きている。
昨季、20本塁打以上を放った日本人選手は山田哲人(ヤクルト/29本)、雄平(ヤクルト/23本)、筒香嘉智(DeNA/22本)、村田修一(巨人/21本)のわずか4名のみ。それが今季序盤は筒香が打撃三部門のタイトル争いを牽引し、交流戦に突入してからは畠山和洋(ヤクルト)が4戦連発を含む11試合で7本塁打と量産体勢。7日現在、2位の筒香とロペスに5本差をつけ、16本塁打でリーグ単独キングに君臨している。
プロ15年目の畠山は昨季、規定打席到達では初めて3割を打ち、リーグ7位の79打点を記録。若手時代は練習サボリの常習犯。首脳陣はその態度の悪さに手を焼くも、辛抱強く「将来の和製大砲」として育て上げた。初めて2ケタ本塁打を放ったのはプロ10年目、2010年シーズンで14本塁打という遅咲きの大器だ。
意外なことに、ヤクルトでは過去に本塁打王を獲得した日本人選手はひとりもいない。まだ国鉄スワローズだった57年の佐藤孝夫が最後だ。歴代キングのパリッシュ、ハウエル、ホージー、ペタジーニ、ラミレス、そしてバレンティンと優良助っ人に恵まれたチームから出現したヒゲ面のパワーヒッター。
その昔、球団には大杉勝男という伝説のスラッガーがいた。大杉は東映時代の70年・71年に2年連続のパ本塁打王を獲得。75年にヤクルトに移籍して来ると、4番打者として78年のヤクルト初優勝に貢献した。
ともに豪快な右の大型長距離砲。大杉があの頃の燕打線を牽引したように、畠山もそのバットでバレンティン不在のチームを引っ張っている。今シーズン、33番は神宮の夜空にあと何本のアーチをかけることができるだろうか?
ヤクルト日本人野手、初のホームランキングへ――。畠山和洋よ、月に向かって打て!
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)