打者・大谷翔平が、またも猛威を振るった。
日本時間29日に行われたホワイトソックス戦。ゲームは5-11の大敗を喫したが、大谷は3安打の猛打賞、前日の同カードでは投げて10奪三振の7勝目、打っても27、28号の固め打ち。2日連続の3安打で打率も急上昇して、三冠王まで視野に入ってきた。
この日の3安打中2本はセンター方向に打ち返したものだったが、特筆すべきは打球の速さと足の速さだ。
1本目の中前打は投手の顔面近くを襲うとあっという間にセンターへ。二遊間が捕球しようにもなす術がない。次の二塁内野安打も大谷の俊足で悠々セーフ。昨年までなら遊撃手が二塁ベースより右翼方向に守っていたが、今季からはルール改正で許されない。この先、首位打者争いが激しくなった時、打球の速さと俊足に、ルール改正の“三点セット”が追い風となっていく可能性は大きい。
早くも球場では「MVPコール」が起こり、中継のアナウンサーは怪しげな日本語を駆使しながら絶叫する。全米を席巻する大谷フィーバーは、同時に日本野球への関心もこれまで以上に高めている。
以前から日本人投手の評価は高かったが、今では吉田正尚(レッドソックス)や鈴木誠也(カブス)両選手がクリーンアップで活躍する時代だ。米球界のネットワークは、すでに日本人野手にも向けられている。
だが、一方で厳しい現実もある。
今月22日には筒香嘉智選手が所属先であるレンジャースを退団、自ら新天地を求めてFA権を行使した。今季の大半をマイナーでプレーした筒香にとって止むにやまれぬ決断だっただろうが、メジャーでは夏以降は有望な若手選手にチャンスを与えるケースが多い。一部では日本球界への復帰も取りざたされているが、最終決断が待たれる。
この筒香にしろ、昨年途中でレッズを退団、広島に移籍した秋山翔吾選手にしても日本での実績は十分な選手。それでもメジャーの厚い壁は存在した。
中継ぎ投手でも160キロ近い快速球を投げ、しかも球質は重く、手元で微妙に変化する。メンタルで追い込まれる部分もあったはずだ。
筒香だけでなく、吉田や鈴木も日本代表では4番を務めた主砲だが、現地では必ずしも長距離砲とは認められていない。それでも後者の2人が通用しているのは、適応力とパワーがあるからだろう。
日本国内に目を転じると、現在は「投高打低」の時代にある。
パ・リーグの打撃成績を見ると、打率が3割を越しているのは.348の頓宮裕真選手ただ一人(28日現在)。その原因は佐々木朗希(ロッテ)をはじめ、山本由伸、山下舜平太、山﨑颯一郎(いずれもオリックス)など160キロ超えからそれに近い剛腕投手が揃っているから攻略は難しい。
以前の当連載でも触れたが、今や日米ともにハイテク機器が野球界にも導入されている。トラックマン・システムなどで球速からボールの回転数、さらには正しい投球フォームまで解析することによって、技術は飛躍的に向上。打者にも応用されているが、現時点では圧倒的に投手が優位に立っている。
メジャーでは、打者がこれに追いつき、パワー合戦の様相を呈している。こうした観点から次の日本人メジャー野手候補を見てみるとやはり最右翼はヤクルトの村上宗隆選手であることは間違いない。
三冠王から一転、今季は打撃不振に苦しみ攻守共に精彩を欠いているが、天性の飛距離と左右に打ち分けられる広角打法はメジャー関係者も二重丸の評価を与えている。本人もメジャー志向であるところから2~3年後に海を渡る公算は大きい。
今季になって評価急上昇なのが日本ハムの万波中正選手だ。目下、パ・リーグのホームランレースでトップを快走する14本塁打。持ち前の長打力に磨きがかかり、俊足強肩と三拍子揃っているのも魅力。これからの成長次第ではメジャーの密着マークは厳しさを増して行くだろう。
27歳と言う年齢や実績面では、魅力十分な岡本和真選手(巨人)にも熱視線が注がれているが、本人のメジャー志向はそれほど高くないと言われている。それでも今後の動向次第では新たな「マネーゲーム」が展開されるかもしれない。
投手に比べると、まだまだ評価の低い野手の日本人メジャーリーガーだが、ダイヤの原石がいるのも事実だ。
侍ジャパンの世界一に大谷翔平の天井知らず?の活躍。“日本詣で”は、さらに過熱の度を増して行く。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
日本時間29日に行われたホワイトソックス戦。ゲームは5-11の大敗を喫したが、大谷は3安打の猛打賞、前日の同カードでは投げて10奪三振の7勝目、打っても27、28号の固め打ち。2日連続の3安打で打率も急上昇して、三冠王まで視野に入ってきた。
この日の3安打中2本はセンター方向に打ち返したものだったが、特筆すべきは打球の速さと足の速さだ。
1本目の中前打は投手の顔面近くを襲うとあっという間にセンターへ。二遊間が捕球しようにもなす術がない。次の二塁内野安打も大谷の俊足で悠々セーフ。昨年までなら遊撃手が二塁ベースより右翼方向に守っていたが、今季からはルール改正で許されない。この先、首位打者争いが激しくなった時、打球の速さと俊足に、ルール改正の“三点セット”が追い風となっていく可能性は大きい。
早くも球場では「MVPコール」が起こり、中継のアナウンサーは怪しげな日本語を駆使しながら絶叫する。全米を席巻する大谷フィーバーは、同時に日本野球への関心もこれまで以上に高めている。
以前から日本人投手の評価は高かったが、今では吉田正尚(レッドソックス)や鈴木誠也(カブス)両選手がクリーンアップで活躍する時代だ。米球界のネットワークは、すでに日本人野手にも向けられている。
だが、一方で厳しい現実もある。
今月22日には筒香嘉智選手が所属先であるレンジャースを退団、自ら新天地を求めてFA権を行使した。今季の大半をマイナーでプレーした筒香にとって止むにやまれぬ決断だっただろうが、メジャーでは夏以降は有望な若手選手にチャンスを与えるケースが多い。一部では日本球界への復帰も取りざたされているが、最終決断が待たれる。
この筒香にしろ、昨年途中でレッズを退団、広島に移籍した秋山翔吾選手にしても日本での実績は十分な選手。それでもメジャーの厚い壁は存在した。
中継ぎ投手でも160キロ近い快速球を投げ、しかも球質は重く、手元で微妙に変化する。メンタルで追い込まれる部分もあったはずだ。
筒香だけでなく、吉田や鈴木も日本代表では4番を務めた主砲だが、現地では必ずしも長距離砲とは認められていない。それでも後者の2人が通用しているのは、適応力とパワーがあるからだろう。
次の日本人メジャー野手候補は?
日本国内に目を転じると、現在は「投高打低」の時代にある。
パ・リーグの打撃成績を見ると、打率が3割を越しているのは.348の頓宮裕真選手ただ一人(28日現在)。その原因は佐々木朗希(ロッテ)をはじめ、山本由伸、山下舜平太、山﨑颯一郎(いずれもオリックス)など160キロ超えからそれに近い剛腕投手が揃っているから攻略は難しい。
以前の当連載でも触れたが、今や日米ともにハイテク機器が野球界にも導入されている。トラックマン・システムなどで球速からボールの回転数、さらには正しい投球フォームまで解析することによって、技術は飛躍的に向上。打者にも応用されているが、現時点では圧倒的に投手が優位に立っている。
メジャーでは、打者がこれに追いつき、パワー合戦の様相を呈している。こうした観点から次の日本人メジャー野手候補を見てみるとやはり最右翼はヤクルトの村上宗隆選手であることは間違いない。
三冠王から一転、今季は打撃不振に苦しみ攻守共に精彩を欠いているが、天性の飛距離と左右に打ち分けられる広角打法はメジャー関係者も二重丸の評価を与えている。本人もメジャー志向であるところから2~3年後に海を渡る公算は大きい。
今季になって評価急上昇なのが日本ハムの万波中正選手だ。目下、パ・リーグのホームランレースでトップを快走する14本塁打。持ち前の長打力に磨きがかかり、俊足強肩と三拍子揃っているのも魅力。これからの成長次第ではメジャーの密着マークは厳しさを増して行くだろう。
27歳と言う年齢や実績面では、魅力十分な岡本和真選手(巨人)にも熱視線が注がれているが、本人のメジャー志向はそれほど高くないと言われている。それでも今後の動向次第では新たな「マネーゲーム」が展開されるかもしれない。
投手に比べると、まだまだ評価の低い野手の日本人メジャーリーガーだが、ダイヤの原石がいるのも事実だ。
侍ジャパンの世界一に大谷翔平の天井知らず?の活躍。“日本詣で”は、さらに過熱の度を増して行く。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)