非常に細かい数字までしっかりと掲載するMLBの公式サイト
1試合で2安打以上記録したときに用いられる「複数安打」。今ではファンの間でも定着した感があるが、日本で広まったきっかけはイチローのMLB移籍ではないだろうか。
イチローの活躍を報じる中で、アメリカのメディアが「マルチヒット」という用語を使い、それをうけて日本で報じるときに「複数安打」と訳したのが始まりだったと思う。それまでは3安打以上のことを猛打賞とは言っていたが、2安打以上を表現する用語は日本にはなかった。最近では「何試合以上複数安打」といった報じ方もするようになり、記録を表す方法が多くなった感がある。
複数安打に限らず、MLBは記録の扱いが細かい。例えば、得点圏打率を見ても2アウトでの得点圏打率といった表し方をすることがある。
MLBの「公式サイト」に載っている成績も実に細かい。打者の成績では、デーゲームとナイトゲームや塁状況別、リードした展開とビハインドの展開での打率以外にも、ゴロアウトとフライアウト、ゴロアウトとフライアウトの割合、相手投手に投げさせた球数といったものまで載っている。ちなみに、サンフランシスコ・ジャイアンツの青木宣親は、ゴロアウトとフライアウトの割合が2.39で、規定打席に達しているMLBの選手の中で2番目にゴロの割合が高い。それから、青木が相手投手に投げさせた球数は1053球というものまで掲載されている。
NPBの公式サイトも、もう少し詳しい成績を掲載すべきでは?
投手の成績では、打者と同じようにゴロアウトとフライアウトの割合以外に、奪った併殺の数、シーズントータルでの球数、1イニング平均の球数といった成績が載っている。
ニューヨーク・ヤンキースの田中将大のゴロアウトとフライアウトの割合は1.15で、1イニングあたりの球数は14.24だ。規定投球回に達した選手の中で1イニングあたりの球数が最も少ないのは、トロント・ブルージェイズのマーク・バーリーの13.98。田中が規定投球回に達していれば、メジャーでは3番目に少ないということもそれらの数字から見えてくる。故障明けということもあり、より少ない球数で長いイニングを投げたい田中だが、しっかりと結果を残しているという部分も知ることが可能だ。
MLBの公式サイトが細かい数字を載せている一方、NPBの公式サイトは数字が好きなファンからすると少々物足りない。
載っている成績は打者なら打数、安打、打率、長打率、出塁率。投手は勝敗や防御率など、一般的によく知られているものばかり。MLBでは守備イニングまで載せているが、NPBは試合数だけ。選手がどれだけのイニングを守ったかまではわからない。
熱心なファンが集計し作成した細かい記録が載った個人サイトもあるが、あくまでもそれは独自のものであって、NPBの公式サイトが載せている記録はあまりにも少ないというのが事実だろう。
野球は数字でも楽しめるスポーツ。数字から選手のプレースタイルをイメージすることもできる。集計に手間はかかるのは間違いない。でも、細かい成績をもう少し増やしていくことで、日本の野球ファンにも新しい「野球の見方」が定着すると思うのだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)