イチローが放出候補に挙がる可能性は…
6月も下旬に入り、メジャーリーグでは7月末のトレード期限を前に、どのチームがバイヤー (有力選手を補強する側)になるのか、もしくはセラー(有力選手を放出する側)になるのかという議論が始まろうとしている。現時点で優勝争いをしていてウイークポイントを抱えるチームは前者。すでに優勝争いは厳しく、来季を見据え再建モードに入るチームが後者となる。
開幕前は少なくともワイルドカード争いを期待されたマーリンズ。しかし現在、地区首位のナショナルズから7.5ゲーム差の4位、ワイルドカード争いでも9.5差と、浮上には大きな連勝が必至の状況だ。この1カ月間でさらに差が広がるようならセラー側になることは間違いない。
そうなった場合、イチローが放出候補に挙がる可能性はあるだろうか?「なくはないが確率は1%未満」というのが現状の答えだろう。
通算3000安打を見据えるイチローとマーリンズはすでに来季の契約延長のウワサが出るほど関係は良好とみられる。しかし41歳のイチローにとって、ワールドシリーズ出場も大きな目標の一つのはず。仮に他球団から獲得のオファーがあったとき、マーリンズもイチローも最初から全否定する理由はない。
実際メジャーでは期限を前に“その選手を放出するの!?”というトレードも珍しくない。そしてトレードに出された選手が翌年、再びFAで古巣に戻るケースも少なくない。イチローとマーリンズの関係ならば、来季戻ってくることを前提に世界一を狙えるチームに“レンタル”に出すことも十分考えられるだろう。そうすることで、チームは来季に向けて新戦力を獲得でき、イチローもワールドシリーズ出場のチャンスを得られる。そして移籍先の球団は弱点を補強できる。ウインウインというわけだ。
それではイチローがフィットする球団はあるだろうか。ずばり、現在ア・リーグで最高勝率を誇るロイヤルズを候補に挙げたい。
ロイヤルズは上位から下位まで切れ目のない打線が特徴だ。しかし4月の1試合平均得点が5.4だったのが、5月は4.0、6月もここまで3.7と下降線をたどっている。そしてウイークポイントはずばり1番打者だ。今季リードオフを務めた選手の打率は.266(メジャー15位)、出塁率は.311(同21位)、盗塁は5個(同25位タイ)である。イチローは打率.288、出塁率.340、盗塁6個と全てで上回る数字を残している。主に1番を務めるエスコバルが下位の打順で本領を発揮するタイプの選手であることも大きい。
そしてライトを守るリオスがケガの影響もあり今季ここまで26試合に出場して、打率.227、1本塁打、9打点、出塁率はわずか.255という成績で、復調の兆しが見られなければ、いつ戦力外になってもおかしくない内容である。イチローのかつての指定席“1番ライト”が補強ポイントになる可能性が高いということだ。
電撃移籍の可能性は1%未満という見立てだが、マーリンズとイチローの関係が良好ならば、むしろチームはイチローが世界一という夢をつかむチャンスを得るため背中を押すことも考えられる。移籍については何が起きるか分からないメジャーリーグの世界。1カ月後にイチロー獲得に名乗りを挙げる球団が多数出るような活躍にも期待したい。