ナ・リーグ最後の三冠王は1937年まで遡る...
先月下旬、マーリンズの主砲マイク・スタントンが骨折したニュースは日本でも広く報じられたが、多くは「イチローの出場機会増につながる」や「マーリンズに悲報」といった類いのものであった。
アメリカでも当然同じような報道はあったものの、中でも目立ったのは「スタントン故障で2人に三冠王獲得の可能性」という別視点の記事だった。
2人とはナショナルズのブライス・ハーパーとダイヤモンドバックスのポール・ゴールドシュミットのことを指す。
前者は「数十年に一人の逸材」という触れ込みで2012年に19歳でメジャーリーグデビューを果たした外野手だ。左打席から軽々とスタンドにたたき込む本塁打シーンを見た日本のファンも多いだろう。
後者はハーパーに比べ日本での知名度はそれほど高くないが、2013年にナ・リーグの本塁打、打点の二冠を獲得しており、実力は折り紙つきの一塁手。この2人がスタントンの故障によって三冠王の可能性が出てきたという。
<ナ・リーグ打率ランキング>
1位 .348 ゴールドシュミット
2位 .344 ハーパー
3位 .339 ゴードン(マーリンズ)
<ナ・リーグ本塁打ランキング>
1位 27本 スタントン
2位 25本 ハーパー [ほか1名]
4位 24本 アレナド(ロッキーズ)
5位 20本 ゴールドシュミット [ほか1名]
<ナ・リーグ打点ランキング>
1位 68点 アレナド(ロッキーズ)
2位 67点 ゴールドシュミット [ほか1名]
4位 60点 ハーパー
※成績は現地時間6日現在
ハーパーは本塁打数でゴールドシュミットに5本差をつけており、現時点では一歩リードしているといえる。課題の打率もデビューから3年間は.270 → .274 → .273と推移していたが、今季は3割を大きく上回り、月別で見ると、4月から.286 → .360 → .370 → .389と右肩上がりだ。
打率を急上昇させた一番の要因は左投手を苦にしなくなったこと。過去3年の対左投手の通算打率は.237(対右は.288)と苦しんでいたのが、今季は.338と1割以上高い数値をマーク。またカウント別で見ると、過去3年は打者不利となるストライク先行時に.197だった打率を今季は.293に上げている。
一方のゴールドシュミットもストライク先行時に強く、86打数32安打(打率.372)と投手有利のカウントで打ちまくっている。首位打者を狙うカギはストライク先行時に高打率を残す必要があるということだろう。
そんな2人にもそれぞれ不安点は残る。ハーパーは1年目の2012年こそ139試合に出場したが、2年目以降118試合、110試合と故障による影響などでフルシーズンを乗り切ったことがない。本塁打、打点を伸ばすには試合に出場しつづけることは必須で、これを乗り越えて初めて三冠が見えてくる。
ゴールドシュミットも同じくオールスター以降の打撃が課題となる。2年目の2012年以降、オールスター前(.308)に比べ、オールスター後は.276と打率を下げている。それでもハーパーと最後まで争う展開になれば2年前に二冠をとった経験が生きてくるだろう。
ア・リーグでは2012年にミゲル・カブレラが三冠王に輝いたが、ナ・リーグでは1937年のジョー・メドウィック(カージナルス)以来三冠王が誕生していない。
ハーパーが22歳の若さで三冠王に輝くのか、ゴールドシュミットが本塁打を量産して追い上げるのか…。78年ぶりの快挙を争う2人の主砲から目が離せない。