逆転優勝を果たすには上原、田沢の活躍は必要不可欠
一時はア・リーグ東地区で他の4チームに取り残されていたレッドソックス。しかしオールスターブレーク直前の7試合を5勝2敗で乗り切り、首位ヤンキースとは6.5差と逆転も狙える位置につけている。クローザー上原浩治はチームが勝利した前述5試合のうち4試合に登板。4回を1安打、無失点、7三振とほぼ完璧な投球で4セーブを挙げ、存在感を見せつけた。
上原は前半だけで22セーブを挙げ、昨季マークした自己ベストの26セーブを上回る勢いだ。今季好調の要因の一つが被本塁打の減少だ。昨季は64回1/3を投げ、10本塁打を浴びたが、今季は33回で2本に抑えている。9イニングあたりの被本塁打率に換算すると1.40→0.55と約3分の1ということになる。
ただしその弊害として9イニングあたりの与四球率は1.16→1.64と悪化している。上原らしさともいえる、積極的にストライクを奪っていくスタイルをやや抑え気味にして、コーナーを突く投球にマイナーチェンジを図っているといっていいだろう。
その上原につなぐセットアッパーの役割を担う田沢純一もここまで安定した投球を続けている。今季はすでに14ホールドを記録しており、昨季の16に早くも並ぶ勢いだ。13年に記録した25ホールドの自己記録更新も視野に入る。
昨季に比べ首脳陣からの信頼も厚くなっている。その証しが4つ以上アウトを取った試合数の大幅増だ。昨季4つ以上アウトを記録したのは71試合中僅か5試合だけだった。今季は39試合で既に9試合に上る。しかもその9試合の防御率は0.63(14回3分の1で失点・自責点ともに1)である。首脳陣が自信を持って田沢をイニングまたぎで起用していることが分かる。
もう一つ成長を示すデータがある。全てのフライに対する内野へのフライの割合を示すIFFB%という指標だ。昨季は全フライ64に対して、内野へのフライは僅か5。割合にすると7.8%であった。しかし今季は全フライ39のうち内野へのフライが9を数える。IFFB%で表すと23.1%という高い数字である。外野への飛球は本塁打など長打につながる確率が高いが、内野へのフライならアウトになる確率は格段と上がる。29歳にして新たな技術を習得したのかもしれない。
つい数週間前まで今季のチーム解体論すらささやかれたレッドソックスが奇跡の逆転優勝を果たすには上原、田沢の活躍は必要不可欠だ。日本人2人を筆頭に世界一を経験している選手を多く抱える点は、大混戦の地区で戦う上で大きな強みとなるだろう。2年ぶりの世界一へ、日本人投手2人がカギを握っているのは間違いない。