真価が問われる後半戦
トミージョン手術を避け、右肘に爆弾を抱えたまま投げ続けるヤンキースの田中将大。今季は開幕から好不調がはっきりしており、地元メディアも登板のたびに手のひらを返すがごとく、高評価と酷評を繰り返している。
ここまで11試合に先発し、うち7試合でクオリティースタート(QS=6回を3自責点以内)をマーク。昨季の20試合中16試合の達成率には劣るが、右肘に爆弾を抱えているという状態を考えれば上出来ともいえるだろう。
今季の11試合から見える後半戦のカギを探ると、2つのキーワードが浮かび上がった。1つめは「制球」である。QSを達成した7試合の与四球率(9イニングあたりの四球数)は0.75と秀逸な数字を残している。逆に未達成の4試合では4.26と5倍以上に跳ね上がる。球威という点では、どうしても昨季前半に比べ劣るため、制球の良しあしが結果に直結しているといっていい。後半戦も制球が定まっているかどうかでその試合の調子が分かるだろう。
2つめのキーワードは「初球」である。1つめの「制球」にも関わってくるが、初球にストライクが取れるかどうかが、今季の田中にとって分岐点となっている。初球ストライク時(カウント0-1以降)の被打率は.174、出塁率は.187だが、初球をボールで入った際(カウント1-0以降)はそれぞれ.290、.369と数字は悪い方に大きく跳ね上がる。さらに三振奪取率も37.1%、14.4%と初球の結果次第で大きな違いが出ている。
地区首位で前半を終えたヤンキースのエースとして後半もチームをけん引する役割が期待される田中。莫大な年俸を得る背番号「19」にとって、何よりも求められることはチームを勝利に導くことだ。前半は1か月以上戦列を離れたが、登板した11試合でチームは8勝3敗と5つの貯金を作った。
オールスター以降もケガなくローテーションを担うことができれば15試合近くに先発するだろう。そこで幾つ貯金を作ることができるのか。エースとしては最低限5つの貯金(10勝5敗)は求められるだろう。右肘の状態も含めて、登板のたびに大きな注目を集める日本の至宝はメジャー2年目にして早くも“優勝請負人”としての真価が問われている。