今季前半戦で13勝を記録したクリス・セール
文字通りスター選手が一堂に会した今年のオールスターゲームは、大谷翔平(ドジャース)が待望の一発を放ち、今永昇太(カブス)が1イニングをピシャリ。日本人選手2人がしっかりと爪痕を残し、記憶にも記録にも残る一戦となった。
1年目ながらオールスターに選出された今永は、苦戦するチームにあって開幕から孤軍奮闘の活躍。何度か“炎上”はあったものの、前半戦を8勝2敗、防御率2.97という文句なしの成績で終えている。
一時はサイヤング賞争いにも名前が挙がったほどだが、そんな今永の成績を大きく上回っていたのが、こちらも“ナ・リーグ1年目”のクリス・セール(ブレーブス)だ。
これまで2度の奪三振王(2015年、17年)に輝いている35歳のベテランは、2020年にトミー・ジョン手術を受け、その後は度重なるケガもあって精彩を欠いていた。
ところが昨年12月にトレードでブレーブスにやってくると、自身初となるナ・リーグの水が合ったのか、開幕から白星を量産。18試合に登板し、13勝3敗、防御率2.70という成績で前半戦を終えた。
勝利数は2位に2勝差をつけ両リーグを通じてもトップ。防御率も同僚レイナルド・ロペスの1.88には及ばないが、堂々のリーグ2位につけている。さらに三振数もリーグ1位のディラン・シース(パドレス)と9個差の3位と、ロペスの成績次第では“投手三冠”も狙える勢いだ。
当然、オールスターにも選出されたが、前半戦の最終試合に先発していたため登板機会はなし。ただ、前半戦をフル稼働したベテランにとってはちょうどいい休息となったかもしれない。
「シーズン22勝ペース」で後半戦を迎えるセールだが、当然その視線の先には地区優勝、そしてレッドソックス時代の2018年以来、自身2度目となるワールドシリーズ制覇も入っているだろう。
そんなセールとブレーブスに立ちはだかるのが、同地区首位に立つフィリーズだ。前半戦をメジャー最高勝率の.646で終え、両者の間には8.5ゲームの差がある。主砲ロナルド・アクーニャJr.を欠くブレーブスにとって逆転はかなり厳しいというのが現地での大半の見方かもしれない。
ただ、ブレーブスの先発陣はセール以外にもポストシーズン経験が豊富なベテラン・中堅がそろっている。40歳の右腕チャーリー・モートンは17年にアストロズ、21年にブレーブスで世界一を経験。30歳の左腕マックス・フリードは21年に中心選手の一人だった。
ここ数年は強打で知られたブレーブスも、今季はかつてのような投手王国を形成している。そのエース格として、セールが前半戦の投球を続けることができれば、打倒フィリーズも決して夢ではないはずだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)