シングルAでOPS「1.531」を記録
先月中旬に行われたドラフト会議から1か月が経過。メジャーリーグの未来を背負う若手の有望株がマイナーリーグで続々デビューを果たしている。
ガーディアンズから全体1位指名を受けた二塁手のトラビス・バザーナは歴代5位の契約金895万ドルで合意。すでにA+(ハイA)で12試合に出場し、打率.256、1本塁打、7打点、3盗塁とまずまずのスタートを切っている。
一方で、バザーナを上回るドラフト史上最高額の925万ドルの契約金を手にしたのは、全体2位のチェース・バーンズ(レッズ)と同3位のチャーリー・コンドン(ロッキーズ)の2人だ。
投手のバーンズは最下級のルーキーリーグに配属されているが、プロとしての初登板を控えている状態。コンドンはハイAで内外野(三塁、左翼)を守るユーティリティ性を発揮しているものの、10試合に出場して打率.205、1本塁打、3打点、3盗塁と打撃面ではやや苦しんでいる印象もある。
そんな中、アスレチックスから全体4位で指名された一塁手のニック・カーツが凄まじい活躍を見せている。
左投げ左打ちの強打者カーツは、ウェイクフォレスト大からプロ入り。契約金はちょうど700万ドルで、これは全体6位の選手よりも低い額だった。
大学にはもともと投手として入学したものの、すぐに野手に転向。195センチ109キロという恵まれた体格を生かし、1年時から豪快なスイングでバットから快音を響かせていた。
大学3年間で残した成績は、164試合で打率.333、61本塁打。今年の春には7打数で6本塁打の離れ業もやってのけている。バットスピードが速く、全方向に本塁打が打てるパワーが最大の長所だが、一塁の守備も軽快。唯一の弱点は足が速くないことくらいだ。
アスレチックスはそんなカーツをA(シングルA)に配属。レベルはハイAの1つ下になるが、ここで打棒を爆発させているという。
カーツは、ここまで一塁手として7試合に出場し、25打数10安打(打率.400)、4本塁打、12打点と大活躍。四球の多さも手伝って出塁率は.571、長打率.960と合わせてOPSは驚異的な1.531にも上る。ケガなく順調にいけば、2026年にはメジャーでプレーしていることだろう。
今季がオークランドでの“ラストイヤー”になるアスレチックスも、そんなカーツを新天地での目玉選手の一人として計算しているはずだ。
アスレチックスは、来季から3シーズンをサクラメントのサターヘルスパークで暫定的にプレー。その後の2028年シーズンからラスベガスを本拠地にすることが決まっている。“ラスベガス・アスレチックス”として迎える1年目に懸ける意気込みは相当高いだろう。
メジャー屈指の“不人気球団”と呼ばれ続けてきたアスレチックス。間借りするサクラメントを経て、記念すべきラスベガスでの開幕スタメンにカーツが名前を連ねるのか。今から4年後の答え合わせが楽しみだ。(※数字は全て現地19日現在)
文=八木遊(やぎ・ゆう)