“熱さ”と“快活さ”が同居する
このオフ、セ・リーグには3人の新指揮官が誕生した。それぞれが、実績十分な監督ということもあり球界の注目を集めているが、なかでも話題を提供し続けているのは阪神・金本知憲監督(阪神)だ。
現役時代、プレーはもちろん「言葉」でもファンを魅了してきた。“選手・金本”として残した名言を、いくつかピックアップしてみよう。
「明日から来シーズンが始まる」
「手術を受けたら、オフに練習できなくなるやろ」
(2004年、岩瀬仁紀(中日)から受けた死球で左手首を骨折するも手術を回避)
「貧血になって半人前、ゲロを吐いて一人前」
(ウエートトレーニングに対する信念)
これらの言葉にもにじむ、野球道、そして勝利をストイックに追求してきた“熱さ”。また、それとは対照的に、新井貴浩(現広島)をはじめとした“後輩いじり”などに見られた“快活さ”も同居していた。
両極端にも思えるそれらの資質は、当然“監督・金本”が目指す野球にも表れているのではないだろうか。
理想多き“欲張り”監督が阪神を変える!
昨秋、監督就任会見に臨んだ。チームの現状を問われ、「やる気、試合に臨む気、『何が何でも勝つ』という気持ちが欠けている」と問題提起した。それを選手に植え付けるため、「選手の意識を変えて」練習をさせる。だがそれは、選手を押さえつけて勝利を目指す集団にしようとしているわけではない。
あくまでも、「厳しく、明るく」がテーマだ。「ふざけることは絶対に許さないが、明るく前向きに」、そして「そのなかで厳しさを持つ」ことを目指すという。これらの言葉は、本人も「両極端ですが……」とエクスキューズしつつ語ったものだ。
いざ野球となると過剰なまでに自らを追い込みながら、ときには少年のように後輩たちにいたずらを仕掛けた。あの金本が監督となった。「見ていて面白い、ワクワクするような戦う集団」を作り上げ、目指すのはもちろん勝利の二文字だ。「最後はそこ。優勝するためにやっている。勝ちながら立て直していく」と力強く語る。
これら、監督就任会見のコメントを見る限り、“あれもこれも”と理想を掲げ過ぎているようにも思える。しかし、過去にはこんな言葉も残している。「僕は本当に欲張りなんですよ」。これは、39歳で新たなシーズンを迎える直前の発言だ。すでに、いくつもの栄光を手にしていた。それでも、満足などできない。
この欲張りな新監督が、停滞している阪神を大きく変えられるか。大いに注目である。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)