長期契約の途中でも、契約内容を見直すことができる条項
ソフトバンクの日本一連覇に大きく貢献し、今季からアメリカ・メジャーリーグへと戦いの場を移すことになった李大浩(イ・デホ)。シアトル・マリナーズとマイナー契約を結び、春季キャンプには招待選手として参加している。
マリナーズとマイナー契約を結ん李大浩だが、先日シアトルのメディアが「李の契約書には3月末にFAを行使できる条項が盛り込まれている」と報じたことで話題になった。
李大浩の場合、春季キャンプなどで結果を残し、メジャーの登録枠に入ることができれば、最大400万ドル(約4億5000万円)の出来高を受け取ることができる。しかし、開幕のメジャー枠25人に入ることができなかった場合は、契約を破棄してFAを行使できるという契約条項だ。
このような条項をオプトアウト(Opt Out)という。Optとは「決める、選ぶ」といった意味があり、選手が自ら契約を途中で破棄する“選択”のことを指す。
「オプトアウト」という契約条項がメジャーで当然のように取り扱われている理由としては、球団側にも選手側にも、双方にメリットがあるからだ。
「オプトアウト」のメリットとは...
選手としては、やはり長期契約を結びたいというのが本音になるが、それはそれで年俸額が固定されてしまうというデメリットも存在する。
例えば、年俸1億円で5年契約(計5億円)を結んだとしよう。その選手が契約途中で年俸5億円に匹敵するような活躍を見せても、年俸は1億円のまま変わらない。
オプトアウト条項を盛り込むことで、契約期間の途中でもそのときの自分に相応しい年俸で契約を結びなおすことや、FAとなり他球団と交渉することもできるのだ。
では、球団側のメリットとは何か。
長期契約を結んだ選手が期待通りの活躍を見せ、契約途中でオプトアウト条項を行使し、FAとなったとする。そのときに契約内容を見直すことができるが、必ずしも引き止める必要もない。
その選手と契約してからそれまではチームに貢献してきたが、年齢も重ねてきたことで今後も同じような活躍を見込めるかどうかわからない。それならば無理に引き止めず、将来有望な選手と契約したほうがいいと考える球団も多い。
オプトアウト条項を盛り込んでいなければ、そういった見直しができないのである。
実はマーくんも持っている「オプトアウト」権
実は、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大も、7年契約の4年目終了時(2017年終了時)に契約をオプトアウトし、FAとなることができる条項を盛り込んでいる。
4年目終了時、2017年の田中は29歳。投手として全盛期を迎える年齢とも言われているが、田中がFAを行使してもヤンキースが2018年以降の田中は力を落としていくだろうと判断すれば契約はしないだろう。このように、球団のリスクヘッジのひとつにもなるのがオプトアウト条項なのである。
李大浩に関しては、春季キャンプでマリナーズの期待に応えられず、メジャーに昇格できなかったとしても、一度FAとなって他球団でメジャー昇格のチャンスを再び得ることができる。
マリナーズとしても、李大浩よりも若い選手や有望な選手を新たに獲得するチャンスを得るため、win-winというわけだ。
マリナーズのジェリー・ディポトGMは「李大浩はメジャーに昇格できる能力を持っているし、期待している」と言っているが、その動向にしばらく注目だ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)