ルーキー戸柱恭孝を正捕手に抜擢する“覚悟”
DeNAが絶好調だ。5月3日には最大11の借金があったが、4日から29日の間で15勝5敗1分の成績。DeNAが二ケタの借金を完済するのは2005年以来7度目のこと。借金11からの完済は、1993年の21試合(16勝5敗)を抜く球団史上最速である。
DeNAは、現在セ・リーグでもっとも波に乗っているチームと言えるが、この強さは決して勢いだけではない。12球団トップのチーム防御率3.06を記録している投手陣の快投はもちろん大きい。だが、それ以上に見逃せないのがセンターラインの安定感が増したことだ。
昨季のDeNAは、キャッチャー、セカンド、ショート、センターを指すセンターラインを固定できなかった。キャッチャーは、黒羽根利規が42試合、高城俊人が40試合、嶺井博希が61試合でスタメンマスクを被っている。
チームの捕逸数はリーグで2番目に多い11を記録し、チームの暴投数にいたってはリーグダントツの68を記録した。暴投は表面的には投手のミスではあるが、同時に捕手の責任でもある。それが今季は捕逸こそリーグ最多タイの3を記録しているが、暴投はリーグで3番目に少ない16まで減った。52試合中43試合でスタメンマスクを被っているルーキー戸柱恭孝の活躍が大きいが、ルーキー捕手に任せた首脳陣の“覚悟”は見事としか言いようがない。
ショートは、昨季リーグ最多タイとなる5人の選手がスタメン出場した。倉本寿彦がチーム最多のスタメン出場だったが、それでもスタメンは65試合にとどまった。ショートでスタメン出場した選手の打率は.225、出塁率は.262でともにリーグワースト。ショートは守りも大切とはいえ、攻撃面の数字があまりにも低過ぎた。
今季は倉本が52試合中47試合でスタメン出場している。打率.309と昨季の.208から1割以上も打率を上げた。また、守っても倉本はここまで失策がひとつもない。もともと守備力には定評があったが選手だが、今季はさらに磨きがかかっている印象を受ける。
新外国人のエリアン次第でリーグ屈指の布陣にも!
センターは昨季、荒波翔がチーム最多の44試合でスタメン出場したのをはじめ、7人の選手を起用した。アレックス・ラミレス監督は梶谷隆幸をライトからセンターに回す構想だったが、梶谷がケガで開幕に間に合わなかった。結果、荒波や桑原将志を起用していたが、固定するまでには至らなかった。
5月4日に梶谷が復帰。ここまで打率.230、4本塁打と力を出し切れていないが、梶谷がセンターに入ったことで、他の選手の起用法に幅が生まれたことは間違いない。梶谷の復帰と快進撃のタイミングが一致しているのは、偶然ではないはずだ。
セカンドは、石川雄洋が昨季に続き多くの試合でスタメン出場しているが、打率.216と物足りない成績。そこで先日、スイッチヒッターの内野手エリアン・エレラ(登録名・エリアン)を獲得。セカンドかサードを任せるようで、エリアンがセカンドに固定できるようになれば、センターラインに関する課題が一気に解消されることになる。
昨季は首位で交流戦を迎えたが、そこから3勝14敗1分と大きく負け越した。センターラインが固定されるようになり、投手陣も充実している今季は、昨季と逆の結果になってもまったく不思議ではない。DeNAの強さが発揮されるのはまだまだこれからだ。
※数字は2016年5月29日終了時点
文=京都純典(みやこ・すみのり)