リリーフ陣の防御率もリーグトップの今季
圧倒的な強さで25年ぶりにセ・リーグを制した広島。10月12日から始まるクライマックスシリーズ・ファイナルステージで勝ち上がってきたDeNAと日本シリーズ進出を懸けて戦うわけだが、キーポイントはどこにあるだろうか。
チーム打率.272、684得点はともに12球団トップ。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の上位打線に、ベテラン新井貴浩や今季大ブレークした鈴木誠也と攻撃力は屈指だ。強力打線に隠れがちだが、チーム防御率3.20もリーグトップで安定して力を発揮した。リリーフ陣の防御率もリーグトップの3.04とリーグ優勝の要因となったが、クライマックスシリーズでもリリーフ陣の出来が重要になりそうだ。
昨季までは勝ちパターンの継投をなかなか確立できなかったが、今季は4月下旬からブレイディン・へーゲンズ、ジェイ・ジャクソンからクローザーの中崎翔太につなぐパターンでチームに安定感をもたらした。
ようやく勝ちパターンの継投ができたかと思われたが、8月に先発の駒不足からヘーゲンズがリリーフから先発に回った。それまでへーゲンズ、ジャクソン、中崎の3人が揃って登板した試合の勝敗は20勝3敗、勝率9割近くを残していただけにヘーゲンズの先発転向はひとつの賭けだったはずだ。
ヘーゲンズに代わって勝ちパターンの一角を担ったのが今村猛。今季チーム最多タイの67試合に登板し3勝4敗22ホールド、防御率2.44と近年の不振から脱した。ヘーゲンズが先発に転向して以降で、今村は20試合に登板し11ホールド2セーブ。20イニング投げて自責点はわずかに3点。そのなかで、マツダスタジアムでは8試合8イニング投げて相手に1点も許さなかった。
一岡や大瀬良も終盤戦で大きくチームに貢献した
今村以外にも、ケガや不調で出遅れた一岡竜司はヘーゲンズが先発に転向して以降、13試合に登板し11回1/3を投げ、1勝4ホールド、自責点はたったの1。ケガで出遅れた大瀬良大地もヘーゲンズが先発に転向して以降、16試合に登板し18回2/3を投げ、3勝1敗4ホールド、自責点は4で防御率1.93。16試合中、失点を与えたのは2試合しかなかった。
ヘーゲンズが先発に転向した窮地を乗り越え、より強力なリリーフ陣となったところに今季の広島の強さが表れている。
クライマックスシリーズに向けて、中崎が腰を痛めたという報道もあったが、先日の紅白戦で登板し最悪の事態は避けられそうだ。レギュラーシーズン終盤同様、ファイナルステージでも今村、ジャクソンから中崎につなぐのが基本的な形で、そのなかに一岡や大瀬良が入っていくことになるだろう。
確かに盤石のリリーフ陣ではあるが、不安要素をあげるなら広島でクライマックスシリーズのファイナルステージを経験した選手はほとんどいないことだ。レギュラーシーズン最終戦から間隔が空いていることもあり、試合への入り方も重要となる。独特の緊張感のなかでプレーすることで、「少しでも早く投げたい」という投手もいるはずだ。第1戦や第2戦で得点差が広がった展開になっても、勝ちパターンで起用する投手をまず登板させ、雰囲気に慣れさせるのもひとつの手だろう。
3位から勝ち上がってきたDeNAが、勢いに乗っているのは間違いない。リーグチャンピオンとして広島がどう迎え撃つか。12日から始まる今季セ・リーグ最後の決戦に注目だ。
※数字は2016年レギュラーシーズン終了時点
文=京都純典(みやこ・すみのり)