新人捕手では球団初の開幕スタメン
昨年、68という過去最悪の暴投数を記録し、開幕前から注目されていたDeNAの正捕手争いだったが、開幕から40試合以上消化し今、山口俊が先発した時以外のほぼ全試合、ルーキーの戸柱恭孝がスタメンマスクをかぶるという結果に落ち着いている。正捕手を固定し、捕手2名体制でやっていくという、開幕前のラミレス監督の構想が今のところ実現していることになる。
捕手は投手とのコンビネーションが大事であり、守備でもセンターラインの要として経験が求められるため、社会人出身で即戦力として期待されているとはいえ、今回の戸柱の起用はかなりの大抜擢だったといえるだろう。セ・リーグでは阿部以来と15年ぶりとなるが、球団史上では初の出来事だ。
固定できなかった捕手
2008年オフに相川がヤクルトへ移籍した翌年の2009年には、88試合出場の細山田武史を中心としてはいたものの、武山真吾、新沼慎二、斉藤俊雄、野口寿浩、黒羽根を含めた実に6人がスタメンマスクを被るという混とん状態。
その後も、鶴岡一成の復帰、ルーキーだった高城の抜擢、黒羽根の打撃好調など毎年のように正捕手固定のきっかけになりそうな出来事は起こるものの、決定打のないまま昨シーズンまでを戦ってきた。
過去には谷繁vs秋元
歴史を遡ると、横浜の正捕手争はこれまでに何度も繰り広げられており、その間にここ数年のように何人かを併用するという正捕手不在の状態が長く続くことも珍しくなかった。
チーム名が横浜ベイスターズに変更となった1993年前後に繰り広げられていた谷繁vs秋元の争いでは、谷繁が正捕手に落ち着いたころからチームの成績も上がりはじめ、1998年の日本一からしばらくはAクラスをキープ。
その谷繁が中日に移籍した翌年の2002年からは中村vs相川という争いが繰り広げられ、チームは3年連続の最下位に沈む。しかし相川が正捕手の座をつかんだ翌年の2005年には再びAクラス入りしている。
もちろんチームの成績と正捕手固定が完全に連動しているわけではないが、やはり、守備の要であるキャッチャーの安定が長いペナントレースに与える影響は小さくないのだろう。相川がヤクルトに移籍した2009年以降、横浜はAクラスどころか4位以上にすら浮上できずにいる。
正捕手固定で上位進出へ
正捕手固定を掲げた今シーズンも、指定席となってしまった最下位に沈んでいるが、チーム防御率はリーグトップであり、昨年は68個記録してしまった暴投も、ペースだけ見るとかなり減少している。
派手な連勝がないため目立たないが、5月になって勝ち越しカードも増加し、徐々に上位との差を詰めてきており、ファンも昨年までとは違う結果を期待しているだろう。
これから夏にむけて打線の復活も待たれるところだが、投手力で勝っていく我慢の試合をものにしていくためには「正捕手」戸柱の存在が大事になってくるだろう。