昨年のパ・リーグは規定到達左腕がたった1人...
昨シーズン、球界全体の問題として露呈した「左腕不足」という課題。秋に行われた野球の世界大会「プレミア12」の侍ジャパンメンバーを見ても、左腕で選抜されたのは松井裕樹(楽天)と大野雄大(中日)の2人だけ。球界を代表する投手たちを挙げていくと、気づけば右投手が多数を占めるというような状態だった。
昨年のセ・パ両リーグにおいても、規定投球回に到達した日本人左腕といえばセ・リーグが石川雅規(ヤクルト)、岩田稔(阪神)、能見篤史(阪神)、大野雄大(中日)の4人で、パ・リーグに関しては吉川光夫(日本ハム)ただ一人。日本人左腕は“絶滅危惧”状態に陥っていたのだ。
ところが、今シーズンここまでの先発左腕を見てると、セ・リーグでは昨年クリアした能見に加えて田口麗斗(巨人)、岩貞祐太(阪神)、今永昇太(DeNA)と4人が規定投球回に到達。パ・リーグも和田毅(ソフトバンク)に菊池雄星(西武)、塩見貴洋(楽天)と3人出ており、ここまでは各球団の先発左腕たちが奮闘を見せている。
輝きを放つ20代のサウスポーたち
特に若い左腕の人材が枯渇していた昨年のプロ野球界。規定投球回に到達した左腕で20代だったのは、大野と吉川の2人だけだった。
それが今シーズンは、現時点で5人もいる。中でも素晴らしい投球を披露しているのが、阪神の3年目左腕・岩貞祐太だ。
初登板となった4月2日のDeNA戦で7回を4安打、12奪三振で無失点に抑える快投。今シーズン初勝利を飾ると、初登板から3試合連続で2ケタ奪三振をマークした。
ここまでリーグトップの防御率0.65、奪三振55を記録。13年のドラフト1位入団ながら、2年間で通算2勝と期待に応えられずにいた左腕が、一気に開花の兆しを見せている。
また、DeNAのドラ1ルーキー・今永昇太も好投を続けている。
奪三振52は、岩貞に次ぐリーグ2位の数字。味方の援護に恵まれず、安定した投球を見せながらも3・4月は勝利なし。苦しい時間を過ごしていたが、5月6日の広島戦で7回無失点の好投を見せると、ひたむきに投げ続けたルーキーに打線も6点をプレゼント。嬉しいプロ初勝利を掴んだ。
ここまで1勝4敗も、防御率2.03はリーグ3位。打線さえ噛み合えば、エース級のはたらきをする可能性も大いにある。DeNAに現れた新星のこれからに要注目だ。
本当の勝負はこれから...
苦しんだ昨年と比べると、たしかに人数は増えている先発左腕。しかし、まだプロ野球は開幕してから1カ月とちょっとが過ぎた程度。これからが彼らにとって本当の戦いになる。
パ・リーグで奮闘を見せる西武の菊池雄星もそう。プロ7年目で初めての開幕投手を務め、ここまでローテーションを守っているが、これまでは毎年のように故障や不調での離脱を強いられてきた。大きな期待を背負いながら、規定投球回に到達した経験はまだ一度もない。
岩貞も今永も、1年間ローテーションを守って戦うというのは未知の世界になる。環境が厳しくなってくる夏場や、プレッシャーの度合いが違ってくる秋の戦いを経て、最終的に投球イニングが「143回」に到達していなければ、個人投手成績の欄に自身の名前が載ることもないのだ。
希望が膨らむ出だしとなった2016年シーズン。あとはここから何人が生き残れるのか。これからの戦いが最も重要な部分になる。
球界の未来を担う、左腕投手たちの奮闘に期待したい。
【規定に到達している日本人左腕たち】※5月10日現在
<パ・リーグ>
和田毅(ソフトバンク)
今季成績:6試 3勝1敗 防2.93
菊池雄星(西武)
今季成績:7試 2勝4敗 防3.40
塩見貴洋(楽天)
今季成績:6試 1勝1敗 防3.00
<セ・リーグ>
田口麗斗(巨人)
今季成績:6試 1勝1敗 防2.61
能見篤史(阪神)
今季成績:7試 2勝3敗 防3.83
岩貞祐太(阪神)
今季成績:6試 3勝1敗 防0.65
今永昇太(DeNA)
今季成績:6試 1勝4敗 防2.03