勝ちパターンでの起用はほとんどない二保
日本のプロ野球では一軍登録できる選手が28人までと決まっている。そのうち25人がベンチ入りし、試合への出場が可能となる。投手と野手で一軍登録される割合は、投手12人、野手16人が最も多い。投手12人のうち、先発ローテーションが5人か6人、リリーフ要員でベンチ入りするのは7人か6人だ。
リリーフの中で抑えがひとり、チームによって異なるが勝ちパターンで起用するリリーフがふたりか3人。残りのリリーフはビハインドの展開で起用されることが多い。いわゆる“敗戦処理”といわれる投手だ。
パ・リーグ連覇を目指し、今季も首位を走っているソフトバンクのリリーフ投手・二保旭。今季、ここまで29試合に登板し5勝1敗、防御率3.00という成績を残している。その二保だが、登板の内訳は12試合がビハインドの場面、5試合が大量リードの場面、同点が6試合、僅差の場面で登板しホールドを記録したのはたったの3試合しかない。この数字だけを見れば、二保は大きな戦力になっていないように見える。しかし、二保の役割は敗戦処理だけではない。
先発投手が5イニング未満など早い段階で降板するときがある。リードしていたとしても勝ちパターンの投手を登板させるには早すぎる。そういったときにロングリリーフとして登板するのが二保のもうひとつの役割である。
4月26日の西武戦では2回3分の1を投げ無失点。6月25日の西武戦では、序盤から点の取り合いとなったが、4回から登板した二保が7回途中まで投げ2失点したものの、試合を落ち着かせチームを勝利に導いた。先発が早いイニングで降板しても、テンポのいい二保のピッチングが攻撃陣にリズムをもたらすこともある。地味ではあるが、そういった投手がひとりいるだけでもブルペンのやり繰りが相当楽になるはずだ。
勝負の夏場を迎え、二保の働きが重要になる!
二保は、2008年の育成選手ドラフト2位でソフトバンクから指名を受け入団した。3年後の2011年オフに再び育成契約を結び、翌2012年の7月に支配下登録。一軍初登板は同年9月13日の楽天戦。昨季まで通算8試合に登板し勝敗はつかなかった。育成枠からコツコツと力をつけ、今季ようやく開幕一軍の座をつかんだ投手だ。
ソフトバンクのリリーフ陣は抑えがデニス・サファテ。セットアッパーとして五十嵐亮太、森福允彦。現在は一軍登録を外れているが、エディソン・バリオスも20ホールドを記録していて、勝ちパターンの投手はほぼ決まっている。二保がその枠に入っていくことは容易ではないだろう。
しかし、これから勝負の夏場を迎えるにあたり、先発投手陣に疲れが出てくることは間違いない。勝ちパターンのリリーフ陣も、登板が重なれば本来のピッチングができなくなることだってある。そういった時に、ロングリリーフなどあらゆる場面で登板できる二保の存在はチームに大きく貢献するだろう。派手さこそないが、二保のピッチングに注目する価値は十分にある。
文=京都純典(みやこ・すみのり)