中学硬式野球チームでコーチを務める傍ら、全国約8,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」の管理人でもある廣川寿さん(横浜港北ポニーコーチ)の少年野球コラムです。
私は小学校1年生の時に野球を始めました。「始めた」といってもどこかのチームに入団した訳ではありません。
未就学の頃から野球は好きで、父親とキャッチボールをしたり、家の近所でバットを振って遊んでいました。小学校に入学して地域の友達や上級生との交流が増え、公園や空き地に集まって様々な遊びをする中のメニューの1つとして「野球」がありました。やがて「野球」を目的に公園などに集まるようになり、上手くなりたいと思って一緒に練習するようになりました。そのうち地域の野球が好きなおじさんが監督やコーチになって野球チームになりました。
これっていわゆる「コミュニティ(共同体)」ですよね。日本で最もメジャーなコミュニティは「町内会」だと思います。「コミュニティ」とは学術的には以下の要素を含むものを指すそうです。
(1)一定地域内の人々で形成されている
(2)彼らの生活はこの地域内で完結している
(3)その関心や利害が共通するところから一体感が抱かれ、生活様式にも一致した特徴が認められる
(4)以上の属性が自然発生的に生成し相互に関連しあって一つの社会的実体を構成する
共同体なのでそこには営利目的はなく、互助的な意味合いが強いものとなります。
私の中での野球指導者像は「近所の野球好きなおじさん」のままです。コミュニティの一員として自分ができることで、そのコミュニティの発展や活性化に貢献する。選手が私の好きな野球を通じて成長してくれれば嬉しい。試合で勝てたら更に嬉しい。ただそれだけです。もちろん営利目的はありません。
ところが昨今の少年野球業界は、やや違う側面もあります。
有名進学塾の進学実績のように、「戦績」「強豪校への進学実績」などをアピールする「塾」のような打ち出し方をするチームが増えたことです。「野球塾(=野球を指導することで生業を立てている団体)」が野球チームとして大会にエントリーすることもあります。学習塾が併設されている野球チームもあります。もはや「習い事」です。
「野球塾」が悪いとは思いません。「塾で勉強すること」「野球塾で野球の練習をすること」は何ら違いません。ただ「学習塾や野球塾」と「地域の野球チーム」は全く異なるものだということは野球に取り組むご家庭にはご理解いただきたいと思っています。何が違うのか?もうちょっと詳しくご説明致します。
「習い事」における生徒は「お客様」です。お客様なので「対価」と引き換えに「学習や練習の環境」「スキルアップの手法」などの対価を得る権利を得ます。これはGive & Takeの関係です。対価を払う代わりに権利を主張することに何ら問題はありませんし、仮に欠席しても権利を放棄しただけなのでそれは個人の自由です。
一方コミュニティは「みんなで資源を出し合って共同体を運営するもの」です。コミュニティを維持するために必要な費用を出しあい、個々が進んで役割を担い、積極的に参加することでコミュニティは活性化します。権利を主張し合うのではなく、お互いが相手を思いやり、尊重しあうことでコミュニティは成り立ちます。
「習い事」と「地域の野球チーム」は根本的に成り立ちが異なるのです。そしてここを履き違えることで野球チームはトラブルに発展しているように思います。選手や保護者が行き過ぎた権利を主張したり、チームや指導者が選手の家庭に対価(金銭ではなくても接待や過剰な手伝いなど)を求めたりするから関係がおかしくなるのです。
1961年 当時のアメリカ大統領であったジョン・F・ケネディの演説での一説。
And so my fellow Americans, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. My fellow citizens of the world, ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man.
同胞のアメリカ人の皆さん、あなたの国があなたのために何ができるかを尋ねるのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるかを尋ねてください。世界の同胞の皆さん、アメリカがあなた方のために何をしてくれるかではなく、人類の自由のために私たちが共に何ができるかを問うてください。
選手・保護者・チーム役員・指導者、みんな「コミュニティの一員」です。
廣川寿(ひろかわ ひさし)
1969年生まれ。愛媛県出身。全国約8,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。
【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数
私は小学校1年生の時に野球を始めました。「始めた」といってもどこかのチームに入団した訳ではありません。
未就学の頃から野球は好きで、父親とキャッチボールをしたり、家の近所でバットを振って遊んでいました。小学校に入学して地域の友達や上級生との交流が増え、公園や空き地に集まって様々な遊びをする中のメニューの1つとして「野球」がありました。やがて「野球」を目的に公園などに集まるようになり、上手くなりたいと思って一緒に練習するようになりました。そのうち地域の野球が好きなおじさんが監督やコーチになって野球チームになりました。
これっていわゆる「コミュニティ(共同体)」ですよね。日本で最もメジャーなコミュニティは「町内会」だと思います。「コミュニティ」とは学術的には以下の要素を含むものを指すそうです。
(1)一定地域内の人々で形成されている
(2)彼らの生活はこの地域内で完結している
(3)その関心や利害が共通するところから一体感が抱かれ、生活様式にも一致した特徴が認められる
(4)以上の属性が自然発生的に生成し相互に関連しあって一つの社会的実体を構成する
共同体なのでそこには営利目的はなく、互助的な意味合いが強いものとなります。
私の中での野球指導者像は「近所の野球好きなおじさん」のままです。コミュニティの一員として自分ができることで、そのコミュニティの発展や活性化に貢献する。選手が私の好きな野球を通じて成長してくれれば嬉しい。試合で勝てたら更に嬉しい。ただそれだけです。もちろん営利目的はありません。
ところが昨今の少年野球業界は、やや違う側面もあります。
有名進学塾の進学実績のように、「戦績」「強豪校への進学実績」などをアピールする「塾」のような打ち出し方をするチームが増えたことです。「野球塾(=野球を指導することで生業を立てている団体)」が野球チームとして大会にエントリーすることもあります。学習塾が併設されている野球チームもあります。もはや「習い事」です。
「野球塾」が悪いとは思いません。「塾で勉強すること」「野球塾で野球の練習をすること」は何ら違いません。ただ「学習塾や野球塾」と「地域の野球チーム」は全く異なるものだということは野球に取り組むご家庭にはご理解いただきたいと思っています。何が違うのか?もうちょっと詳しくご説明致します。
「習い事」における生徒は「お客様」です。お客様なので「対価」と引き換えに「学習や練習の環境」「スキルアップの手法」などの対価を得る権利を得ます。これはGive & Takeの関係です。対価を払う代わりに権利を主張することに何ら問題はありませんし、仮に欠席しても権利を放棄しただけなのでそれは個人の自由です。
一方コミュニティは「みんなで資源を出し合って共同体を運営するもの」です。コミュニティを維持するために必要な費用を出しあい、個々が進んで役割を担い、積極的に参加することでコミュニティは活性化します。権利を主張し合うのではなく、お互いが相手を思いやり、尊重しあうことでコミュニティは成り立ちます。
「習い事」と「地域の野球チーム」は根本的に成り立ちが異なるのです。そしてここを履き違えることで野球チームはトラブルに発展しているように思います。選手や保護者が行き過ぎた権利を主張したり、チームや指導者が選手の家庭に対価(金銭ではなくても接待や過剰な手伝いなど)を求めたりするから関係がおかしくなるのです。
1961年 当時のアメリカ大統領であったジョン・F・ケネディの演説での一説。
And so my fellow Americans, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. My fellow citizens of the world, ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man.
同胞のアメリカ人の皆さん、あなたの国があなたのために何ができるかを尋ねるのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるかを尋ねてください。世界の同胞の皆さん、アメリカがあなた方のために何をしてくれるかではなく、人類の自由のために私たちが共に何ができるかを問うてください。
選手・保護者・チーム役員・指導者、みんな「コミュニティの一員」です。
廣川寿(ひろかわ ひさし)
1969年生まれ。愛媛県出身。全国約8,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。
【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数