巨人の命運を握る大砲
ギャレット・ジョーンズ、背番号「5」。由伸巨人のキーマンはこの男だ。
11日に行われた初のシート打撃で、メジャー122発男は挨拶代わりの一撃を披露した。
無死二塁を想定して行われたシート打撃、相手は変則サイド左腕の公文克彦だった。メジャー時代から苦手としていた左投手であり、しかもアメリカではなかなかお目にかかれない変則のサイドスローと悪条件が重なったが、助っ人は1ボール2ストライクからの4球目を完ぺきに捕らえると、打球はライトポール際のスタンド中段に消えた。
名刺代わりの一発に宮崎がどよめいた。高橋由伸新監督も思わず「飛びますね」と頬を緩める。
アメリカでは8年間のメジャー生活で122本の本塁打を記録。パイレーツ時代の2012年にはシーズン27発も記録している左のスラッガーだった。
昨シーズンはヤンキースに在籍。年俸500万ドル(約5億6000万円)という契約だったが、57試合の出場に留まり、打率.215、5本塁打、17打点と持ち前の打力を発揮できず。マイナー契約が濃厚となった昨オフに、新たな活躍の場を求めて日本にやって来た。
日本が誇る屈指の名門は、昨シーズン極度の打撃不振に苦しんだ。チーム打率.243はリーグ最低の数字で、本塁打98はいわゆる“違反球時代”の2012年以来となるシーズン2桁台ととにかく貧打に泣いた。
新生・由伸巨人の救世主へ…。新助っ人には大きな期待がかかる。
苦手克服のカギは“愛妻”にあり?
実戦形式の練習とはいえ、シート打撃の1打席で騒ぎ立てるのは時期尚早かもしれない。しかし、今回の一発は大きな意味のある一発だった。
そのひとつが、「“左投手”からの一発」であったこと。それも初対戦で、変則サイドスローの投手に対して1打席で結果を出したのはサプライズだった。
メジャー8年間の通算成績を見ると、対右投手の打率が.265だったのに対し、対左となると.194にまで落ち込む。さらにスライダー系のボールに対しては.166、カーブ系が.217と横の変化への弱さも露呈していた。それだけに、今回の一撃が持つ意味というのは大きいといえる。
実は、来日してから内田順三打撃コーチとともに取り組んでいたのが“対左投手”という課題。「体が開いて上体が前に出る」というクセを克服するべく、名コーチが考案したのは「妻の名前でタイミングを取る」というものだったという。
合言葉は「キャー・シー」。愛する妻であるキャシー夫人の名前を心のなかで唱える。「キャー・シー」と伸ばしてタメるところがミソで、この一呼吸が変則投手の変化球を懐まで呼び込み、体を開かずにスイングするための良き間になるのだ。
「ボールを奥さんだと思うのではなくて、頭で思い出すんだ」と笑った新助っ人。内田コーチも「切れるかなと思ったけど戻ってきた。良い打ち方をしている」と早速現れた効果にたしかな手応えを感じている。
“自前助っ人”のよくないイメージも払拭!
近年の巨人の中で目立つのが、助っ人野手の発掘失敗。いわゆる“自前助っ人”のハズレの多さだ。
貧打に苦しんだここ2年間は“キューバの至宝”フレデリク・セペダをはじめ、ホアン・フランシスコ、アレックス・カステヤーノスと、救世主となることを期待して獲得した助っ人野手がことごとく失敗に終わった。
さらに遡ってもジョシュ・フィールズ、ラスティ・ライアル、エドガルド・アルフォンゾ、ゲーブ・キャプラーなどなど...多くの名前が挙げられる。
チームが強かった時代を支えたロベルト・ペタジーニ、タフィ・ローズ、李承ヨプ(※火へんに華)、アレックス・ラミレスといった名助っ人たちは全員日本の他球団から移ってきた選手たちだった。
ちなみに、巨人軍の80年以上に及ぶ長い歴史の中でも、“自前助っ人”で1年目に30本塁打以上をマークしたのはあのウォーレン・クロマティただ一人。ギャレットがあの伝説の助っ人のような活躍を見せた時、巨人はきっと頂点に限りなく近い位置にいるだろう。
“衝撃デビュー”の11日から一夜明け、12日に行われた紅白戦では、右手に死球を受けるアクシデントも。2日連続のアピールとはならなかったが、「少し腫れているが問題ない。大丈夫だよ」と無事を強調。首脳陣もホッと胸をなでおろした。
あとはこれから本格化していく実戦でどんな姿を見せてくれるのか。巨人の命運を握るギャレット・ジョーンズから目が離せない。
▼ ギャレット・ジョーンズ
生年月日:1981年6月21日生(34歳)
出身:アメリカ
経歴:ツインズ-パイレーツ-マーリンズ-ヤンキース-巨人
ポジション:外野手
身長/体重:196cm/107kg
投打:左投左打
[MLB通算] 911試 率.251(2924-734) 本122 点400