先発転向で見せる藤川球児の新たな一面
“松坂世代”の2人の剛速球投手が、生まれ変わろうとしている。
阪神の藤川球児は13日、甲子園で行われたオープン戦・日本ハム戦に先発。5回を無安打、1四死球、無失点に抑える好投を見せ、順調ぶりをアピールした。
藤川といえば、阪神の抑え時代は“火の球ストレート”と呼ばれる浮き上がる直球を武器に、相手打線を力でねじ伏せていた豪腕投手。しかし、13日の日本ハム戦ではストレートだけでなく、カーブやツーシームといった変化球を織り交ぜながら、15個のアウトの内、実に11個をフライで打ち取った。
対戦した中田翔が「差し込まれている感じがした。球速より速く感じた」と話せば、阪神の金本知憲監督も「真っ直ぐで差し込んでいる印象があった。思ったより最後ピュッときている」と分析。年齢やヒジの故障、手術を受けたこともあって全盛期のような球速はないものの、変化球を上手く使いながら“キレ”のあるストレートで打ち取る新しいスタイルが確立されつつある。
“平成の怪物”もまたスタイルの過渡期を迎える
また、藤川と同学年で“松坂世代”の世代頭でもある松坂大輔(ソフトバンク)も、新しい投球スタイルを模索中だ。
松坂も150キロを超えるストレートと切れ味鋭いスライダーを武器に、ばったばったと相手をなぎ倒していく投球が印象的。それでも、今年の9月で36歳を迎えることや、こちらもケガによる手術歴もあって、若い頃のような力強いストレートは投げられなくなっている。
3日に行われた韓国・斗山との練習試合では、ストレートの最速は141キロ。その中でも、スライダーやチェンジアップといった変化球を駆使しながら抑えていく新たな一面を見せた。
投球スタイルの変化について、松坂は13日放送のNHK『サンデースポーツ』で桑田真澄氏と対談し、「理想は変える必要がないのが一番」としながらも、「現状はそういうわけにはいかないので、いつかはスタイルを変えなければいけない時がくる。そのできていたスタイルにこだわることも大事だし、それを捨てられるかも重要になってくる」と“転換期”を迎えていることを明かした。
「はっきりとしたものはないが、“こっち”と“こっち”かなというものが見えてきている」と語った松坂。日本での再出発へ向けて、“怪物”も生まれ変わろうとしている。
かつては球界を席巻していた“松坂世代”の選手たち。しかし、いまではユニフォームを脱いだ選手も多くなり、バリバリ活躍しているという選手は少なくなった。
一方で田中将大(ヤンキース)や、前田健太(ドジャース)、坂本勇人といった“88年世代”が台頭。球界の中心の座を取って代わったと言ってもいいだろう。
それでもまだ、ユニフォームを着て現役を続ける男たちがいる。ベテランと呼ばれる域を迎えた“松坂世代”の2人は、メジャーリーグを経験してもキャリアを終わらせることなく日本に戻り、スタイルを変えてでも現役にこだわって投げ続けようとしている。
松坂と藤川、2人の“同世代”投手が見せる「ニュースタイル」に注目だ。