2年連続で開幕投手を務める大谷
昨今、プロ野球界は、オフシーズンの体重増量がブームである。多くの選手がウェイトトレーニングや食事で身体を追い込み、翌シーズンの飛躍に向けて10キロ近くの体重増加を目指す。
2015年、大谷翔平も増量に取り組んだ一人。93、4キロであった体重を100キロ近くまで増やすためトレーニングには、オフシーズンに大先輩・ダルビッシュ有の指南も加わり、より本格的なものになった。
そのダルビッシュも、いまでこそ105キロを越える図太い身体が定着しているが、入団当初は90キロ程度と、今よりも15キロ以上も軽い華奢な印象の投手であった。
そんなダルビッシュが増量に取り組んだのが、日本ハム時代、10年のオフシーズンでやはり10キロ程度の増量。11年シーズンは、18勝6敗というキャリアハイ、平均球速も149キロまで引き上げ、最高の形でこの年のオフにポスティングで海を渡った。
肉体改造からメジャー移籍まで、何一つ問題がなかったように見えるが、11年、札幌ドームでの開幕戦で5年連続開幕投手を務めたダルビッシュは、西武に打ち込まれ、自身ワースト7回7失点で負け投手になっている。
何が原因であったかは定かではないし、その後は引きずることなく勝ち星を自己最高の「18」まで積み重ねているところは、まさにダルビッシュの非凡さを感じさせる。
3月17日、鎌ケ谷にソフトバンクを招いての一軍オープン戦に先発した大谷。ソフトバンクも開幕投手の摂津。両軍ほぼ開幕スタメンを意識したオーダーで臨んだ試合は、オープン戦とは思えないほどの真剣な雰囲気が漂っていた。
そんな中で、大谷は福田秀平に初回、先頭打者アーチを浴びるなど、6安打4失点と精彩を欠いた。5回には、一死二塁のピンチから、初球、この日最速の159キロの渾身のストレートを柳田悠岐に打ち返されるなど、力勝負に負けてしまった印象を受けざるを得ない。
あくまで調整の場と言えばそれまでであるが、増えた車体重量をドライビングするための課題を残す形となった。
今年は本拠地開幕ではなく、QVCマリンでの対ロッテの開幕戦となるが、奇しくも相手の開幕投手は、ダルビッシュが増量元年の開幕戦で投げ合い、黒星を喫した涌井秀章(当時は西武)になりそうだ。
ダルビッシュは増量したオフの翌年がその時となった。大谷は、いつかはわからない。しかし、大谷のその出で立ちからは、ダルビッシュが醸し出していた「世界標準」と同じものが、年々増しているように見える。「増量元年」の16年、大谷翔平の開幕戦はどんなものになるだろうか。