二刀流といえば大谷
二刀流といえば大谷翔平(日本ハム)。15年シーズンは、投手として15勝(5敗)、打者として打率.202、5本塁打と、投手としての活躍にやや偏りはした。
だが、14年シーズンには、投手として11勝(4敗)を挙げ、打者としてもレギュラー出場する野手の半分以下の234打席数でありながら、チーム4位の10本のホームランを放った。
一般的に、野球界において『二刀流』といえば、投手と打者の二本の『刀』を使いこなすことを指すことが多い。少年野球から高校野球まではエースで4番と、身体能力で兼ねる選手はいても、大学野球からはDH制が導入されるリーグもあることもあり、急激に投手への打撃の期待度は下がる。
プロ野球においては、投手が打席に立つセリーグでの投手の打順は最も打順が回ってきづらい9番がたいていお決まりで、投手の打撃は、期待されていないに等しい。
次のバッターは9番の投手で一塁もランナーで埋まっていない場合、8番打者との勝負を避けて、敬遠され投手との「安全な勝負」を選択ケースも少なくない。だからこそ、野手としてクリーンアップでスタメン出場することもある大谷の凄さはひと際目立つ。
最近増えた、もう一つの二刀流
しかし、投手についで、もう一つ好んで勝負をされたがられるポジションがある。『捕手』だ。15年も、規定打席に達した捕手の数自体も少ないが、打率1割台が非常に多く、シーズンを通して打席に立ち.250を越えた選手はいない。しかし、昨今、もう一つの打線のウィークポイントになりがちな8番に据えられることの多い『捕手』の打撃事情にも大きな変化が見られつつある。
13年の楽天日本一に貢献した岡島豪郎(楽天)、14年ドラフト1位で入団し、1年目で6本、2年目に17本の本塁打を記録した森友哉(西武)、チームのクリンナップに定着しつつある近藤健介(日本ハム)は、元々捕手で入団し、打撃の良さから野手としての出場もできる捕手と野手の二刀流だ。
なかでも近藤に関しては、内野、外野ともにそつなくこなし、打率はパリーグ第3位の.326を記録する三刀流、四刀流ぶり。正捕手不在の昨今のプロ野球界において、楽天には嶋基宏、西武には炭谷銀仁朗と、100試合以上安定してマスクを被る捕手がいるチーム事情において、打撃を買われてのコンバートの色が強い岡島、森の両選手も、状況によっては捕手としての出場も可能であることは、チームとしても心強い。
捕手も、投手と並ぶほどの特殊なポジションであり、日々野球の基本である守りに神経を使うことが多いため、全試合捕手として出場してこれだけの打撃成績を残すことが出来るかは、わからない。
「受けられて、打てる」彼らは、「投げられて、打てる」大谷のように大きく取り上げられることはないが、全体を見渡す能力に長けた「扇の要」がもう一人試合でグランドにいるという意味でも、チームにとって大きな存在になっていることは間違いないであろう。
彼らは、マスクを外し、投手に背を向けられたポジションにいても、投手を陰で支える女房役なのだ。