ローテ外なのにチーム最多勝!?
開幕から21試合を消化し、10勝11敗の借金ひとつでパ・リーグ3位につけている西武。ここまでチーム最多の3勝をマークしているのが、アンダースローの牧田和久である。
牧田の成績を見てみると、7試合の登板で3勝負けなし、ホールドが2つ。特筆すべきはホールドポイントが“5つ”あるという点。ホールドポイントとは、ホールドと救援で挙げた勝利を足したもの。お察しの通り、牧田が挙げたチーム最多の「3勝」は、すべてリリーフ登板で挙げたものなのだ。
ところが、ここまでの投球イニングは17回と1/3。ついこの間までは規定投球回にも到達していた。一体これはどういうことなのか。
十亀との不思議な関係性
牧田の今シーズン初登板は、開幕2戦目の3月26日・オリックス戦。1-5と4点を追いかける4回表から登場すると、直後に味方打線が奮起。4回裏に一挙4点を挙げて追いつくと、5回に2点、6回にも2点と重ね、逆転に成功。9-5とリードを奪う。
援護をもらった牧田は、5回以降は1本の安打も許さない快投を披露。結局9回まで投げ抜き、今シーズン初勝利を掴んだ。
その後はショートイニングのリリーフが続き、4月6日、8日は連投でホールドをマーク。かと思いきや3連投目となる9日のロッテ戦では、またも先発・十亀剣の後を受ける形で5回から登板。8回までの4イニングを無失点に抑えると、その間に味方が勝ち越しに成功。2勝目を掴んだ。
さらに16日のオリックス戦、ここでも5回持たずマウンドを降りた十亀の後を継ぐ2番手として登板。2回と1/3を無失点に抑え、その間に味方が逆転。チームトップとなる3勝目を掴んだ。
このように、白星を挙げたのは、いずれも十亀剣の先発試合。ここまで先発の仕事ができていない十亀の状態というのも気になるところではあるが、必ずその後に出てくる牧田が壊れかけた試合を見事に立て直し、チームを勝利に導くという一種の流れのようなものができているのだ。
牧田にしか出来ない「強み」
基本的には、8回の高橋朋己、9回の増田達至という勝ちパターンに繋ぐのが役目。ただし、一般的な勝利の方程式に見られるような「7回・1イニング限定」というはたらき方ではない。
時には1イニング、またある時は回跨ぎの2イニング。先発が崩れれば6イニングも…。まさに“便利屋”として先発と勝ちパターンを繋ぐ架け橋になっている。
このような芸当ができるのも、牧田だからこそだ。プロ6年目とキャリアは長くないものの、ルーキーイヤーからその起用法は独特そのもの。55試合に登板し、先発に中継ぎ、抑えまで経験。5勝7敗、22セーブで1ホールドという成績で新人王を獲得した。
2年目からは先発としてローテーションに入り、そこから3年間で通算29勝を記録。そして昨年は、エース・岸孝之の離脱により開幕投手の大役を任されるも、夏場は守護神・高橋朋の不調から抑えに配置転換。ルーキーイヤー以来となるセーブを記録したが、直後に今度は先発の層が薄くなったことから、先発に復帰。9勝11敗で3セーブという成績を残した。
このように、入団当初から様々な役回りを経験してきたことが、すべて今に繋がっている。牧田自身もこのスタイルを「自分にしか出来ない強み」として捉え、取り組んでいるという。
22日は本拠地で楽天と対戦する西武。予告先発は十亀剣と発表された。牧田の登板も3勝目を挙げた16日以降なく、休養は十分。今回もいつ声がかかっても良いような、万全の状態で控えていることだろう。
もし西武プリンスドームに観戦に行く人やテレビで中継を見るという人がいたら、是非とも試合だけでなくブルペンの様子もチェックしていただきたい。