ハマスタの主役になった男
4-5と1点ビハインドの8回裏、二死満塁。カウント3ボール2ストライクから快音を残して放たれた打球は、横浜スタジアムの右中間スタンドに吸い込まれた。
この瞬間、エリアン・エレラは横浜スタジアムの主役になった。来日第1号が起死回生の逆転満塁弾。球場のファンは総立ちで大喜び。イニングが終わり、守備に就くために出てきた男を待っていたのは大歓声だった。
9回にはこの日2つめの失策となるタイムリーエラーを喫し、最終的には1点差まで迫られたものの、ストッパーの山崎康晃が最後を締め、8-7で逃げ切り。エリアンはすぐさまマウンド上に向かい、山崎に熱い抱擁。感謝と謝罪のハグで守護神を称えた。
この日の成績は5打数2安打、1本塁打で4打点。殊勲の一発を放ったとはいえ、三振3つにエラーも2つという内容は手放しで褒め称えることはできないだろう。
それでも、一振りでゲームの主役になれる。ファンに喜びを届けることができる。エリアンはそんな野球の魅力を体現した。
“なにかやってくれる”男
今シーズン途中でDeNAに加入した1年目の助っ人。入団会見の時、高田繁GMが「パワーというよりはチャンスメーク。アベレージヒッターとして期待したい」と評したように、シュアな打撃がウリのスイッチヒッターで、いわゆる“助っ人らしい”タイプとは少し違う選手である。
チームを優勝、CS進出に導くべくやってきたエリアンは、ここまで二塁や三塁で27試合に出場。打率は.229と正直に言って物足りない成績だといえるだろう。
それでも、“なにかやってくれる”――。そんな期待を抱かずにはいられないのだ。
実際、ここ一番で発揮するその集中力は凄まじいものがある。以下のデータをご覧頂きたい。
【走者別・打率まとめ】
無し .109(55-6)
一塁 .333(21-7)
一二 .300(10-3)
一三 .333(3-1)
二塁 .500(6-3)
二三 .667(3-2)
満塁 .667(3-2)
このように、走者がいない時は1割がやっとという成績なのに対し、走者がいる時はどんな状況でも3割以上のアベレージをマーク。得点圏打率は.440とチャンスで異常なまでの強さを発揮しているのだ。
ちなみに、先頭打者時の成績は19打数無安打。リードオフマンのようでありながら、チャンスメイクはからっきし。それでもチャンスにはめっぽう強い。
後半戦のDeNAは、“なにかやってくれる男”エレラから目が離せない。