策士・栗山監督が実現できていない勝負手
交流戦終盤からの連勝で、独走かと思われたソフトバンクを追撃。最大11.5あったゲーム差も8日現在6.5ゲームにまで縮め、日本ハムがロッテと共に、パ・リーグを盛り上げている。
栗山英樹監督は、就任時から常識にとらわれない策を講じることで、チームに刺激を与え続けてきた。今年成果を上げている大谷の「リアル二刀流」など、いかんなく実力を発揮しているように見える。
しかし、栗山監督が講じた秘策の中で、まだ結果が出ていないものがある。それは、近藤健介へ命じた捕手復帰だ。
2011年ドラフト4位で入団した近藤は、初めて開幕一軍スタートとなった2014年に89試合に出場したが、捕手としての守備機会は16試合にとどまり、三塁手としての出場(70試合)が多かった。
そんな近藤が昨年、大野奨太と市川友也の離脱により、開幕スタメンマスクを被った。プロ4年目で訪れたこのチャンスをものにし、正捕手の座を奪うかと思われたが、打撃好調を維持していたにも関わらず、2人が復帰したシーズン後半はDHでの出場が増える。結局出場129試合中、捕手での出場は58試合のみだった。
その要因として、1割台という低い盗塁阻止率があげられる。3割前後の安定した数字を残す大野、市川と比べると送球への不安が大きいのだ。時として試合の流れを決めることにもなる盗塁阻止。近藤の打撃力をもってしても打ち消せる不安ではなかったということだろう。
捕手での出場も…
そして迎えた今シーズン、昨年に続き開幕一軍スタートとはなったものの、やはり外野とDHでの出場が続き、打撃も昨年ほどの勢いがなく5月27日に二軍落ちとなった。その時に栗山監督から言い渡されたのが、捕手への復帰だった。
打撃好調な大谷翔平や谷口雄也など、外野、DHでのポジション争いが激しくなったことに加え、ソフトバンクにこれ以上離されないための一手として「打てる捕手」を望んでいた監督の思惑もあるのではないか。
リードと強肩では定評のある大野と市川だが、大野はここ2年間の最終成績では打率1割台、今年は2割以上をキープしてはいるが、市川ともどもなかなか打撃成績があがってこない。故に“打てる捕手”の存在は貴重なのだ。外野に活きの良い若手が揃っていることを考えると、昨年、リーグ3位の打率を残した近藤の捕手起用こそ、チームの攻撃力を最大化させる方法の1つであることは間違いない。
二軍降格後、イースタンリーグで4割を超す打率をマークした近藤は、6月14日に一軍再昇格し、18日の中日戦で今季初マスクをスタメンから被った。先発した吉川光夫をリードし、5回まで中日打線を1点に抑える。しかし、1-1の同点で迎えた6回、無死一塁から荒木に二盗を許すと、続く平田に決勝打を浴びて敗戦した。
捕手復帰を言い渡されてから3週間余り、悪くはない内容ではあるが、送球という弱点を最悪な形で露呈してしまう結果とった。この試合の2日後、近藤は故障で再び登録抹消となった。
一方チームは翌6月19日から連勝を続け、首位ソフトバンクとの差を一気に縮めた。しかしこの連勝がいつまでも続くわけはなく、ここからソフトバンクに追いつくためにはさらに何か起爆剤が必要となるだろう。
スタートはつまずいてしまった「打てる捕手」計画だが、これから待ち受ける優勝争い、Aクラス争いに向けて、求められる時がきっとくるはずだ。必ず這い上がってくるであろう近藤の成長した姿を楽しみに待ち、パ・リーグの灯が最後まで消えないことを願う。