ハーラーダービーを引っ張る2人の右腕
いよいよ8月7日(日)に開幕する「第98回全国高校野球選手権大会」。7月31日には大阪と神奈川で決勝戦が行われ、全ての代表校が出揃った。
いよいよ高校球児たちの熱い夏がはじまる――。しかし、熱いのは高校野球だけではない。プロ野球のペナントレースも佳境を迎え、セ・パ両リーグともに面白くなってきた。
1球に泣いたエース
チームを引っ張るのが5年目右腕の野村祐輔。今シーズンはメジャー移籍した前田健太の穴を埋める活躍を見せ、ここまでリーグトップの12勝(3敗)をマークしている。
野村は広陵高のエースとして高校3年の春、夏と甲子園の土を踏んだ。2007年は決勝戦まで進むも、佐賀北高の“がばい旋風”に飲み込まれる。7回まで1安打に封じながら、8回裏に押し出しの四球で失点。4-1となった直後に逆転満塁弾を浴び、準優勝に終わった。
頂点へ登りつめた“がばい旋風”が甲子園史に残るミラクルとして語り継がれる一方、満塁弾前の押し出しの場面でのジャッジが“疑惑の判定”として物議を醸すなど、良くも悪くも人々の記憶に強く残る一戦となった。
卒業後、野村は明治大学への進学を選択。1球に泣いた経験から制球力を磨き、精密機械と呼ばれるコントロールを手にし、大学球界を席巻する。
1年春から登板を果たすと、1年秋には、史上5人目となるリーグ戦防御率0.00の偉業を達成。世代トップクラスの投手に成長し、2011年のドラフト1位で広島に入団した。
甲子園での悔しさをバネに大学で力をつけ、大きく成長した野村がチームを25年ぶりのVへ導こうとしている。
鷹を猛追するハムのキーマン
一方のパ・リーグでは、日本ハムが独走状態のソフトバンクに待ったをかけ、最大で11.5ゲームあった差を「3」まで縮めた。破竹の勢いでソフトバンクを追い詰めたチームの原動力となったのが、2年目右腕の有原航平である。
ここまで10勝(4敗)を挙げ、防御率1.90はともにリーグ2位という数字。二刀流の怪物・大谷翔平とともにチームの先発陣を支えている。
この有原も、野村と同じ広陵高の出身である。これも野村と同じく、3年の春・夏と2季つづけて甲子園に出場した。
春のセンバツでは4試合に先発し、チームをベスト4まで導いたものの、夏は肘のコンディションとの兼ね合いに苦しんだ。
結局、広島予選では登板なしに終わるも、チームは甲子園に出場。満を持して有原を投入したが、聖光学院・歳内宏明(現阪神)との投げ合いに敗れている。
悔しさで高校野球を終えた男も、野村と同様に大学への進学を選択。早稲田大の4年間でエースとしての力をつけ、2014年のドラフト会議では4球団が競合する1位に推されるほどになった。
野村にとっても、有原にとっても、悔しさが残ったそれぞれの甲子園...。しかし、彼らの野球人生にとって、甲子園での悔しさがその後の糧となり、今こうして成功を収めている。
首位を走る広島と、首位を追う日本ハムのエース...。一戦も負けることが許されないこれからの戦いでこそ、この2人の真価が問われる。