5年前のドラフトの目玉
2011年のこの時期、“大学BIG3”と呼ばれてドラフトの目玉となっていたのが菅野智之(巨人)、野村祐輔(広島)、藤岡貴裕(ロッテ)の3人だ。
あれから5年…。それぞれ壁にぶつかった時期などもあったが、今季はようやく3人揃って一軍の舞台で活躍したシーズンとなった。
スタートから揃わなかった3人
野村は2011年のドラフト1位で広島に入団。1年目から先発ローテーションの一角を任されると、セ・リーグの新人投手では46年ぶりとなる防御率1点台を記録。即戦力の期待通りの活躍で、同年の新人王に輝いた。
藤岡は同年のドラフトでロッテ、横浜(現DeNA)、楽天の3球団から1位指名。抽選の結果、ロッテに入団が決まった。4月こそ3勝1敗、防御率2.75を記録し、好調なスタートを見せて期待を抱かせたが、最終的には6勝7敗で防御率3.36とやや物足りない数字に終わっている。
2人が1年目から一軍でプレーした一方、菅野はと言うと大学に“残った”。ドラフトでは巨人と日本ハムの2球団から1位で指名を受け、日本ハムが交渉権を獲得。ところが、かねてより巨人入りを熱望していた男はその指名を拒否。浪人を決めたのだった。
遅れること1年、菅野は2012年のドラフトで巨人入り。1年目から2ケタ13勝を挙げ、リーグ優勝に貢献。この年2年目を迎えた野村も、春先こそ苦しむも前年を超える12勝をマーク。球団初となるクライマックスシリーズ進出の立役者となるなど、2年続けての活躍を見せたが、藤岡は2年連続で6勝止まりに終わるなど、3人揃っての活躍とはいかずに終わった。
菅野がリードも、野村が猛追
すると、14年以降は菅野が巨人のエースへと成長。プロ入りから3年連続となる2ケタ勝利を挙げ、昨年11月に開催された『WBSC世界野球プレミア12』では日本代表の一員としてプレー。
気がつけば球界を代表する投手となり、3の中では頭一つ抜けた存在となった。
一方の野村と藤岡はというと、同じ時期に壁にぶつかっていた。野村が14年に7勝、15年は5勝と成績を落としていくと、藤岡も14年はリーグワーストの被本塁打を記録するなど、なかなかその力を発揮できず。2人はもがいていた。
そんな中、転機となったのが今シーズン。プロ5年目を迎えた野村と藤岡、そして4年目を迎えた菅野がチームに欠かせない存在となる。
特にここ2年は低迷が続いていた野村が、素晴らしい活躍を見せた。5月25日の巨人戦から7月22日の阪神戦まで8戦8勝。前半戦だけで11勝をマークする快進撃。
後半戦に入ると勝ち星に恵まれない時期もあったが、9月には4勝を挙げるなど、自己最多の16勝で最多勝を獲得。最高勝率との二冠に輝き、25年ぶりのリーグ優勝の立役者となった。
菅野は4年連続の2ケタ勝利こそ逃すものの、最優秀防御率と最多奪三振のタイトルを獲得。打線の援護に恵まれず、勝ち星を思うように積み重ねられなかったが、6月中旬までは驚異の防御率0.88をマークするなど大黒柱として君臨。エースとして安定した成績を残した。
ただし、体調不良でCSのマウンドに立つことができず、チームはファーストステージで敗退。後味の悪い形でシーズン終了を迎えた。
そしてプロ入りから悩める時期が続いた藤岡は、昨季途中からのリリーフ転向が奏功。大学時代に見せていた力強いストレートが戻り、シーズン序盤はロングリリーフとして壊れかけた試合を何度も立て直した。
シーズン途中に左肘痛で離脱したが、32試合の登板で1勝1敗6ホールド。防御率は2.55と好成績を収め、2年連続Aクラス入りに貢献した。
5年前に“大学BIG3”と呼ばれた男たちが、ついにチームの主力としてその才能を開花。来季はスタートから軸としての働きに期待がかかる。是非とも3人揃って、シーズン通しての活躍に期待したい。
“大学BIG3”の成績
・菅野智之(巨人)
今季成績: 26試 9勝 6敗 防2.01
通算成績:101試 44勝28敗 防2.34
・野村祐輔(広島)
今季成績: 25試 16勝 3敗 防2.71
通算成績:109試 49勝36敗 防3.27
・藤岡貴裕(ロッテ)
今季成績: 32試 1勝 1敗 防2.55
通算成績:150試 21勝30敗 防3.81