厳しい目が向けられる時代
近年なにかと感じる、“規制”の多さ。差別、不謹慎、コンプライアンス...。周囲の目が厳しくなっていることを感じる事象が増えた。
つい最近も、それを思わせる出来事がアメリカ・メジャーリーグで起こった。MLBで新労使協定が正式承認され、その中に盛り込まれていた“女装禁止”という項目が物議を醸しているというのだ。
メジャーでは新人選手を歓迎する儀式として、“仮装”というのがひとつの伝統となっている。
移動の際に持ってきた服をすべて隠され、代わりに用意された衣装を着ざるを得ないというもの。その中でよくあるのが“女装”だった。今年、ドジャースの前田健太がチアガールの格好をさせられた様子を覚えている方も多いことだろう。
今回この女装が禁止となった背景には、選手へのいじめに繋がる恐れがあるということと、女性差別や国籍差別に繋がる可能性があるから、ということ。言わんとしていることも理解できなくはないが、少し過敏すぎやしないかという気持ちにもなる。
もはや伝統行事として根付いているものであり、経験した日本人選手もほとんどが「たのしかった」というコメントを残す。むしろこういった経験をしてようやく“一人前”という認識が強いだけに、この決定にはメディアだけでなく選手や元選手からも異論を唱える声が挙がった。
なお、禁止されたのは女装行為であり、おそらく仮装の伝統はこれからも残っていくものと思われる。ただし、こういった時代の流れや風潮が続けば、いつどこで何に規制のメスが入るかは分からない。伝統が受け継がれていくことの難しさを感じる、まさに“現代らしい”一件であった。