与四球率は増えたが、平均球数が減った要因
9月26日、巨人がセ・リーグ3連覇を果たした日の夜。チームトップの勝ち星をあげ、優勝に貢献した菅野智之が出演したテレビ番組で自身のピッチングについてこんなことを言っていた。
「昨年(2013年)よりゴロを打たせることができたと思います」
データを見ると、確かにその傾向が出ている。2013年シーズン、菅野のゴロアウトとフライアウトの比率(※GO/AO)は、1.36だった。それが2014年は、規定投球回に達した投手の中でリーグトップの1.81まで上がっているのだ。2位が岩田稔(阪神)の1.56ということからも、菅野がいかにゴロを打たせたかがわかるだろう。
ゴロを打たせるメリットは、長打を浴びる可能性が低くなることや打者を1球で打ち取れることもできるため、少ない球数で長いイニングを投げられることにある。
2013年、菅野の1イニングあたりの平均球数は16.09球だったが、2014年は15.47球。数字にすると、わずか0.5球程度に過ぎないが、長いシーズンを考えれば少しでも減らしたほうがいいのは明らか。与四球率が昨季の1.89から2.04に増えたにも関わらず、平均球数が減っているのもゴロを打たせるピッチングの質がよくなったからだろう。
攻撃陣で苦労したが投手と守りで勝ちとった3連覇
リーグ屈指のゴロピッチャーに進化した菅野は、開幕から先発した7試合で6勝をあげ、開幕ダッシュに大きく貢献。8月から1カ月ほどケガで離脱したが、復帰後は9月10日の阪神戦、同16日の広島戦と優勝を争う重要な試合で好投し、セ・リーグ3連覇をグッと引き寄せた。
6イニング以上投げ3自責点以内に抑えるクオリティースタート率も76.9%でリーグ2位と抜群の安定感を誇っている。
昨季、菅野が先発した23試合の中で、6イニング未満で交代したのはたったの3試合だけ。そのうち、10月2日のヤクルト戦はリーグ優勝決定後の調整登板(試合中に腰と上腕に違和感を訴え途中降板)で、実質2試合しかなかったことになる。勝利数こそ2013年の13勝から1つ減らした菅野だが、防御率は3.12から2.33で自身初のタイトルを獲得し、1イニングあたりに許した走者の数を表すWHIPも1.15から1.10と改善した。
一方、巨人のチーム打率はリーグ5位の.257で、規定打席に達した3割打者はゼロ。チーム最多本塁打はロペスの22本で、2リーグ制後の巨人が打率3割と30本塁打がいない中で優勝したのは初めてのことだった。
攻撃陣に悩まされる中、チーム防御率3.58でリーグ1位の投手陣とリーグ最少の71失策の守りで勝ち取ったペナントだったのだ。その中心にいたのが、まさに菅野なのである。
リーグ3連覇を果たしたものの、クライマックスシリーズで阪神に屈辱の4連敗。日本一奪還のために、今季の菅野にはシーズンを通しての大車輪の活躍が望まれる。
(※)ゴロアウト/フライアウト比率(GO/AO )
セイバーメトリクスの指標のひとつで、ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い投手となる。今季のセ・リーグ平均は1.16。パリーグ平均は1.11。
文=京都純典(みやこ・すみのり)