大岩 Larry 正志のメジャーリーグ観戦記『ぶラリー、野球デザインの旅』 ~クーパーズタウン 編~
初観戦を終えた翌日は、ニューヨークから車で4時間のクーパーズタウンへ日帰りで野球殿堂を訪れた。
早朝に出発、しかもなかなかの距離だが、楽しみな気持ちしかなかったので全く苦ではなかった。
いよいよ到着というその数km手前に「クーパーズタウンドリームズパーク」という施設を見かけたので車を降りたのだが、そこは少年野球専門の球場が20面以上ある、とても大きな野球公園だった。
何やら大会が行われていて、数十チームが集まっているのだが、アメリカは少年野球のユニフォームもポップでかわいい。
それにしても、大きな功績を残した過去の名選手を讃える殿堂がある街に、未来のメジャーリーガーを育てる施設があるとはオシャレである。
もしかしたら目にした少年の中に将来大物になる選手がいたかもしれないなどと想像しつつ再び車で移動するも、そこからわずか数分で街の中心地に到着。
わずか人口2000人のこの小さな街に野球殿堂が建てられたのは、このクーパーズタウンでアブナー・ダブルデイという軍人が初めて近代野球を行ったからだと言われているが、近年、ここが野球発祥の地というその説は否定されている。
とはいえ、街に到着し、最初に目にしたダブルデイフィールドにはとても感動した。
「初めて近代野球が行われた」と、かつて言われていた場所である。
歴史を感じる古い鉄骨の屋根と木造のスタンドに身を置くと、「初めて」だったかどうかなんてどうでもよくなる。
100年近くも前からここで野球が行われているということは事実で、それを感じるだけで、誰もいないグランドでもずっと見ていられる。
昨今のメジャーのスタジアムは、古いデザインを現代風に取り入れたネオクラシックスタイルなデザインが流行っているが、この球場を見るとその流れもなるほどと思えるほど心地よくスタイリッシュだ。
ちなみに訪れたこの日は偶然にも、球場名にもなっているアブナー・ダブルデイの誕生日だったのだが、全く何も行われていなかった。
クーパーズタウンは、このダブルデイフィールドや野球殿堂も並ぶ、わずか200mほどの通りがメインストリートだが、両脇には野球関係のグッズを扱うお店でギッシリ。
殿堂に行く前にそれらのお店を覗いたのだが、メジャーリーググッズやサイングッズを扱うお店やオリジナルバットを作れるお店から昔のグローブが置いてある野球アンティークショップまであり、帰りの時間が決まっている事を忘れるほど、それらを見る事に没頭してしまった。
これじゃいくら時間があっても足りないと、野球殿堂へ。
こここそがまさに「ヒストリーオブベースボール」が全てつまった場所である。
建物の存在感に圧倒され、思わず一礼をしてから入場してしまった。
この殿堂に関してはもうここでは書ききれないので、直接訪れてもらうしかないが、多くの歴史的な収蔵物に、もうため息と関心の連続でしかなかった。
もちろん今後の自分の野球デザインにも勉強になるものばかりが並んでいた。
館内を見ていて、ひとつ感心させられたのは、小さな子供や女性も多かったことだ。
古い展示物を見ながら両親から説明を受けたり、質問したりしていたのだが、それらを説明するのが父親だけではなく母親だったりもする。
ここでもアメリカ人と野球の関係の深さを感じた。
この通り以外にはあまり人がいないほど小さな街なのだが、しかしさすがに「野球の街」である。
歩いている住人の杖までバットでできていた。
vol.3につづく
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大岩 Larry 正志
グラフィックデザイナー/ボイスアクター
ONE MAN SHOW代表。
多数のグラフィックやロゴ、CDジャケットから、
2008年の埼玉西武ライオンズ交流戦用、
2009年の福岡ソフトバンクホークス「鷹の祭典」用の各ユニフォームとグラフィック、
2010年にリニューアルされた名球会のユニフォームとロゴ、
2012年からは楽天イーグルスの「TOHOKU GREEN」のユニフォームやチャンピオンロゴデザインなどをデザイン。
2015年、初めてのセリーグチーム、東京ヤクルトスワローズのCREWユニフォーム、TOKYOユニフォームのデザインを担当。
野球以外にもカーリングチーム「北海道銀行フォルティウス」のロゴ/ユニフォームやスキージャンプ高梨沙羅のヘルメットなど、スポーツデザインには造詣が深い。
また、アニメ「The World of GOLDEN EGGS」ではボイスアクターとしてアドリブっぷりを発揮する一面も。
http://www.oneman-show.com