外野陣に大きな故障がない限りイチローの扱いはスーパーサブ
イチローのマーリンズ入団会見から5日でちょうど1週間がたった。その会見でイチローが放った一言がある。「僕がこの2年間欲していたものというのは、これだったんじゃないかなと思います―」。“これ”というのはマーリンズ入団の事を指しているが、やはりヤンキース時代の起用法に少なからず不満を持ち、葛藤の日々を過ごしていたことがうかがえる。そしてイチローは鉄壁ともいわれるマーリンズのレギュラー外野陣の“控え”という道を選んだ。はたして、注目される新天地での起用法はどうなるのだろうか。
まずスタントン、イェリッチ、オズーナの3選手に大きなケガなどアクシデントがない場合、イチローの出場機会はほぼ代打や代走に限られるだろう。先発機会は週に1試合あるかどうかといったところか。ただし、チームに代打の切り札的存在がいないこと、イチローの注目度の高さからほぼ毎試合起用はされるだろう。
イチローの存在が補完するマーリンズの弱点とは
昨年のマーリンズには大きな弱点があった。シーズンを通じて左打者の代打成績は75打数7安打(打率.093)。イチローが残した代打での6安打(13打数、打率.462)と1本しか違わない。さらに昨季イチローは代走に9回起用され、盗塁企図3回、うち2回を成功させている。マーリンズは年間通じて代走起用が9回しかなく、盗塁企図は一度もなかった。まさにイチローは昨季のマーリンズのウイークポイントを補う存在なのだ。
レギュラー3人が故障せず、同様にイチローも健康なら、先発出場30試合(×3打席)、代打出場110試合(×1打席)、他に代走や守備での出場など打席数は年間200前後になると予測が立つ。ではレギュラー3人に故障の不安はないのか。
スタントンは昨年9月、顔面に死球を受け、その後遺症(トラウマ)も心配されるが、デビューした2010年以降5年間で他に2度の故障者リスト(DL)入りを経験している。イェリッチも2年目の昨年夏場に1度、オズーナは1年目の2013年に1度、それぞれDL入りを経験している。3人合わせて約9シーズンで4回を数える。イチローの“14年間でDL入り1度”に比べるのは酷だが、3人にケガの不安がないわけではない。もし3人の誰かが故障もしくは不振によるマイナー降格などになった場合は、その選手の打席数はイチローがしっかり確保するだろう(当然イチローが結果を残しているという前提だが)。
またイチローが活躍するための起用法として、相手投手の左右にこだわらない点を挙げておきたい。メジャーに詳しいファンなら知っての通り、イチローは左投手を苦にしない。むしろサウスポーにめっぽう強い。ヤンキースでの2年半ではその傾向が顕著で、対右投手の打率(.260)に比べ対左は.341と8分以上も高かった。にもかかわらず、特に昨年は左投手が先発時はスタメンを外れることが多かった。マーリンズとしては、その辺のデータもインプット済みのはず。左投手だからといってイチローの起用を迷うことはないはずだ。
打席数自体は昨年より少なくなる可能性は高い。しかし、ヤンキースとは状況もチームカラーも全く異なる新天地で、イチローはどんなプレーを見せてくれるのか。8か月後、「この2年間欲していたもの」を手に入れたイチローの姿を心待ちにしたい。