コラム

野球とアメフトの二刀流を生む、アメリカにおける部活動のあり方を考える

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今年のスーパーボウルに出場したシーホークスのラッセル・ウィルソンはテキサス・レンジャースにも所属[Getty Images]

NFLとMLBでオールスターゲームに出場 同じ週に本塁打とタッチダウンを記録!?


 先日、NFLの王者を決める第49回スーパーボウルがシアトル・シーホークスとニューイングランド・ペイトリオッツの対戦で行われた。ラストワンプレーまで勝敗の行方がわからない歴史的な試合を制し、ペイトリオッツが10年ぶりの王者に輝いた。

 惜しくも連覇はならなかったが、シーホークスのQB(クォーターバック)、ラッセル・ウィルソンは鋭いパスを数多く見せた。そのウィルソン、じつは、NFL以外にMLBテキサス・レンジャーズにも所属している選手でもある。

 ウィルソンは高校卒業後、2007年のMLBドラフトでボルチモア・オリオールズから41巡目で指名されたが、ノースカロライナ州立大への進学を選んだ。大学でも、アメフトと野球で才能を発揮したウィルソンは、10年のMLBドラフトで今度はコロラド・ロッキーズから4巡目で指名され入団。A級で32試合に出場し打率.230、2本塁打の成績を残した。

 翌11年もA級でプレーし、打率.228、3本塁打を記録したが、12年はNFL入りを目指すためにスプリングトレーニングに参加しなかった。その後、12年のドラフトでシーホークスに指名されNFL入りを果たしたが、13年MLBのルール・ファイブ・ドラフト(※)でレンジャーズに指名され、現在はレンジャーズ傘下の一員でもあるというわけだ。

 間もなく始まるMLBのスプリングトレーニングにウィルソンも参加する予定だが、メジャー昇格を目指すことはないという。レンジャーズもウィルソンの野球選手としての能力としてではなく、一流のアスリートとしての姿勢や心構えを若手に伝えてほしいといった狙いがあるそうだ。

 ウィルソンが本格的にNFLとMLBの二刀流になることはなさそうだが、過去には何人かいた。MLBでカンザスシティ・ロイヤルズなどに所属し、NFLではロサンゼルス・レイダースでプレーしたボー・ジャクソンは、MLBとNFLの両方でオールスターゲームに出場した唯一の選手だ。

 ディオン・サンダースは、同じ週にMLBで本塁打を放ち、NFLでタッチダウンを記録した唯一の選手だ。また、1991年、92年にはアトランタ・ブレーブスの一員でワールドシリーズに出場し、95、96年にはダラス・カウボーイズの一員としてスーパーボウルに出場している。こちらも現在のところ、サンダースただひとりである。


アメリカの部活動は季節によって変わる アスリートとしての幅も広げる選択制

MLB Photos Archive


 日本では考えられない複数の競技でのプロがうまれる理由のひとつに、アマチュア時代の環境がある。

 アメリカでは高校までの部活動(クラブ活動)は、複数のスポーツを掛け持ちするのが一般的なのである。例えば、秋はサッカー、アメフト、バレーボール。冬はバスケットボール、室内陸上、レスリング。春は野球、屋外陸上などと複数のスポーツから選択する。夏休みは様々なスポーツのサマーリーグが行われる。つまり、秋はアメフト、冬はバスケット、春は野球をプレーし、それぞれのスポーツで腕を磨けるのである。

 掛け持ちができる利点は、複数のスポーツをすることにより、自分の適性を客観的に把握できること。そして、そのスポーツでしか鍛えられない部分を短期間で徹底的に追求できる利点もある。アスリートとしての幅も広げられるというわけだ。

 日本のように、ひとつのスポーツに一生懸命取り組むのも素晴らしいが、早い段階から選択の幅を狭めてしまうのは少々もったいない気もする。

 近年、日本の部活動のあり方が社会問題になることが多いが、こういった考え方もあるということを頭の片隅に置いておきたい。


(※)ルール・ファイブ・ドラフト
 有望な選手が活躍の場を与えられず、マイナーで飼い殺し状態になることを防ぐ目的で、他チームの所属選手を獲得できる制度。メジャーの40人ロースター(登録枠)に空きがあるチームのみ参加が可能。また、18歳以下で入団した選手のうち、在籍年数5年未満の選手は指名できないなど様々な規定がある。

文=京都純典(みやこ・すみのり)
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