世界一から一転 昨年は夏場以降に不振
2013年秋、レッドソックス世界一の歓喜の中心にいたのは大車輪の活躍を見せた上原浩治だった。その1年後、チームは一転低迷し、上原自身も8月中旬から苦しい投球が続いた。しかしオフには2年間の契約延長(総額1800万ドル)を勝ち取り、再びチームの絶対的守護神として新シーズンを迎える。4月に40歳になるが、去年夏場以降の不振から脱却できるのだろうか。
昨季の上原は自己最多の26セーブを挙げたが、防御率は前年の1.09から2.52に、1イニングあたりの走者の数を表すWHIPは0.57から0.92に悪化。月別の防御率を見ると、4月から順に、0.93→0.69→1.80→2.45→5.56→6.23と8月以降急激に高くなっていて、40歳を迎える投手との契約延長を疑問視する声も少なからずあった。
夏場から不振に陥った原因は幾つか考えられる。1つ目はチームが低迷する中、セーブ機会(≒登板機会)が減ったこと。登板間隔は短めの方が力を発揮するタイプであることから、調整の難しさもあったと推測できる。ちなみに胴上げ投手になった2013年レギュラーシーズンは、連投(中0日)が15試合あったが、14イニングを失点1(自責点0)に抑えている。
2つ目の原因はチームの低迷や自身にトレード話が持ち上がるなどしたことによるモチベーションの低下が挙げられる。事実、去年8月に自身のブログに「どこにモチベーションを置けばいいのか、ずっと悩んでいる」と心境を吐露している。
3つ目の原因として2013年シーズンの登板過多を挙げておきたい。レギュラーシーズンの73試合、74回1/3はともに自己最高。さらに緊張感がより高まるポストシーズンでも13試合、13回2/3を投げ、その年合計88試合で88イニング。世界一の代償を払ったと言うのは酷だが、登板間隔を詰めて本領を発揮するタイプの上原といえども、その疲れが去年の夏場に一気に押し寄せたとしても不思議ではない。
鳴りを潜めた“三振を奪う投球”が復活
では上原は今季、完全復活できるのだろうか?
球団の考えは当然「Yes」だ。それは新たに2年契約を結んだことからも分かる。前述した月別防御率に話を戻すと、8月と9月はそれぞれ5.56と6.23。しかし8月16日から9月4日までに投げた6試合だけを見ると、4回2/3で失点10(自責点10)。防御率にすると19.29というありさまだった。この6試合は例外中の例外だったとは考えられないのか。
上原にとって、三振を奪えるかどうかが好不調を測るバロメーターとなる。昨季、開幕から不振に陥る8月16日より前までは三振を奪う確率(奪三振÷対戦打者数)は40.0%と高かった。5人の打者と対戦して2つ三振を奪っていた計算だ。それが不振に陥った6試合では16.7%まで悪化。自身もブログで「スプリットが落ちない」と嘆いていたように、メカニズムが狂っていたのだろう。
しかしクローザーを外され、間隔を空けて登板したその後3試合(9/12~閉幕)を無失点で乗り切り、三振を奪う率も38.5%と不振前の水準にまで戻した。3イニングで5つの三振を奪ったが、うち4つが空振り三振と、内容も良かった。
わずか3試合だが、その投球はチームが契約を2年延長するのに十分なパフォーマンスだった。レッドソックスが再び優勝争いに加わるためには、上原が2年前に匹敵する活躍を見せることが必要不可欠。これまでケガや不振など幾つもの困難を乗り越えてきた上原なら、十分に実現可能なタスクに違いない。