打率、出塁率は変わらずも、長打力は減少の傾向
今季からサンフランシスコ・ジャイアンツに移籍した青木宣親。オープン戦の序盤はなかなかヒットが出なかったが、終盤にかけて8試合連続安打をマーク。レギュラーシーズンが開幕したあとも好調を維持し、開幕から7試合連続安打で打率は.400を記録している。(*日本時間13日現在)
まだ4試合ながら、新天地でリードオフマンとして早速結果を残している青木だが、今後は出塁力だけではなく長打力のアップがあればより大きな戦力としてチームに欠かせない選手になるだろう。
メジャー移籍後、青木の打率はメジャー初年度の2012年から昨年まで(.288/.286/.285)と大きな差はない。出塁率も(.355/.356/.349)と打率ほどではないが、こちらも極端な差はない数字が出ている。
しかし、長打力に関する数字は落ちてきているのが気がかりだ。
2012年は10本塁打を放ったが、2013年は8本塁打、昨年は1本塁打しか打てなかった。また、二塁打と三塁打の合計は2012年が41(37二塁打、4三塁打)、2013年が23(20二塁打、3三塁打)、昨年が28(22二塁打、6三塁打)となっている。
2013年と昨年では打数が100以上違うため、数字以上に長打の数は増えているが、メジャー初年度の2012年と比べれば少なくなっていることは明確だ。
セイバーメトリクスにISO(※1)という、長打力を計る指標がある。その数字を見てみると、2012年は.144だったISOが、2013年は.084、昨年は両リーグワースト5位の.075まで落ちており、データからも長打力の低下が見えてくる。
二塁打、三塁打が出やすい本拠地に期待膨らむ
長打が少なくなった要因としては、ゴロの打球が多くなった点が挙げられる。
ゴロアウトとフライアウトの比率を計るGO/AO(※2)が2012年は1.50、2013年が2.03、昨年は2.07と年々ゴロアウトの割合が高くなっているのだ。
俊足の青木はゴロを打つことで内野安打の可能性も出てくるが、長打に関してはゴロよりもフライやライナーを打ったほうがいい。
今季、まだ少ない打数だがGO/AOが1.29となっており、昨年までと比べてフライアウトの割合が増え、ヒットでもライナーの打球が多くなっている。
ジャイアンツの本拠地AT&Tパークは右中間が128メートルと非常に深く、昨年の三塁打数は136本でメジャーの中で6番目に多い。左打者の青木にとって、二塁打、三塁打が打ちやすい球場ともいえる。
もちろん状況によってゴロを転がす打撃は必要だが、今のようなライナー性の強い打球をコンスタントに打てるようになれば、出塁率だけではなく長打力も上がってくるはずだ。
出塁力に長打力も加わったリーグ屈指のリードオフマンとなれるか――。今季の青木に注目したい。
(※1)ISO(Isolated Power)
長打率から打率を引いて計算する。長打率は長打が少ない場合でも打率が高ければ長打率も高くなるが、ISOでは純粋な長打力を計る。
(※2)ゴロアウト/フライアウト比率(GO/AO)
ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い打者となる。長打力の高い選手は、概ねフライアウトが多い。
文=京都純典(みやこ・すみのり)