2年続けて3割打者なしは球団史上初
とにかく、「打てない」。今季の巨人を表す言葉はこれに尽きるだろう。
チーム本塁打数は97本でセ・リーグ4位だが、チーム打率.242はリーグワースト。規定打席に達しているのは坂本勇人と長野久義のふたりだけでリーグ最少だ。両選手とも打率トップ10に入らず、3割にも遠い。昨季も、巨人は3割打者がひとりもいなかったが、2年連続で巨人に3割打者がいないのは2リーグ制後で球団史上初のことになる。
また、チーム最多本塁打は阿部慎之助の15本で、シーズン20本塁打にひとりも到達しなければ1960年以来55年ぶりのことだ。
かつては12球団屈指の破壊力を誇ったが、この2年ですっかり弱体化してしまった巨人打線。要因はさまざまだろうが、そのひとつは初球時の打率の低下にあると見る。
28日現在、セ・リーグで規定打席に達している選手の初球時の平均打率は.329。巨人のレギュラー陣で、初球時の打率がリーグ平均を上回っているのは長野の.353、村田修一の.381、立岡宗一郎の.333、井端弘和の.345と4人しかいない。
坂本の初球時の打率は.250でリーグ4番目に悪く、阿部慎之助は.303、亀井善行は.273、アンダーソンは.250、小林誠司は.231と3割に届いていない選手も多い。
大事な一戦で積極的に振っていった岡本和真
ファーストストライクに視点を変えても、規定打席到達者の平均が.341に対し、巨人のレギュラー陣は.326。長野の.402や阿部の.377が目立つぐらいで、坂本は.261にしか打てていない。
バッテリーにとって最も難しいのは初球の入り方だと言われている。ただ振ればいいということもでないが、ストライクを取りに来た甘い初球を見逃してしまうのは実にもったいないことだ。今季の巨人打線は甘い初球を見逃し、難しい球に手を出して凡退というケースが多い。相手バッテリーを楽にさせてしまっては、たとえ好打者が並ぶ打線でも威力は半減してしまう。
苦しんだ巨人打線のなかで、来季以降に希望を抱かせた選手もいる。昨年のドラフト1位岡本和真だ。首位ヤクルトと2ゲーム差で迎えた26日からの2連戦。連勝しなければ優勝が難しくなる中、岡本は2試合ともスタメン出場した。
26日の初戦、1点を追う4回裏1死三塁の場面で打席に立った岡本は、ヤクルトの先発石山泰稚の初球を叩き、ライト前に同点タイムリーを放った。
ただでさえ足が震えそうな場面で、積極的に初球を振った岡本。思い切っていこうと思うだけではなく、結果も出せる高卒ルーキーはなかなかいない。まだ恐さを知らないともいえるが、プロで生き抜くために積極的に振っていくことは必要なことだ。
27日の試合に巨人は敗れ、ヤクルトに優勝へのマジック3が点灯した。28日は阪神に敗れ、ヤクルトが勝ったため、ヤクルトのマジックは1になった。V9以来のリーグ4連覇はかなり厳しくなったが、わずかながら可能性はまだある。岡本のように積極的に振っていくことが、今の巨人打線に必要なことではないだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)