プロ野球は巨人の高橋由伸が現役を引退して、即監督に就任したことで来季の12球団監督人事が決まった。セ・リーグは阪神・金本、DeNA・ラミレス両監督を含め6人全員が40代で元打者。うち5人が元外野手である。さらに6人中3人は2000安打以上の“名球会”入り選手である。6人の中で通算安打数が最も少ないヤクルトの真中監督でも通算1122安打を放っている。
金本知憲 2539安打
谷繁元信 2108安打
緒方孝市 1506安打
真中 満 1122安打
プロ野球では伝統的に実績を残した名選手が監督になることが多く、セ・リーグ6監督も例に漏れず現役時代は主力として長年にわたり活躍した。かたやパ・リーグは日本ハムの栗山監督が通算336安打と全監督の中で最も現役時代の実績に乏しいが、4年のうち3度Aクラスにチームを導くなど監督として見事なタクトを振るっている。
では海の向こうメジャーリーグではどうか。メジャーは伝統的に日本とは正反対で名選手が監督に就任すること自体珍しい。今季プレーオフに出場した10チームの監督を見ると、全員が現役時代は元打者だったが、10人の中で現役時代に最も実績を残したといえるのがドジャース監督を退任しマーリンズ監督に就任したマッティングリー氏(通算2153安打)だ。1100安打のヤンキース・ジラルディ監督が安打数で続くが、真中監督のそれよりも少ない。
また10人中2人(メッツ・コリンズ監督とカブス・マッドン監督)はメジャーでのプレー経験がなく、レンジャーズのバニスター監督はメジャーでの通算成績が1打数1安打、ブルージェイズのギボンズ監督は通算11安打など、選手としての実績はほぼ皆無の監督も多い。10人の合計安打は4887安打で、セ・リーグ6人合計(1万1045安打)の半分にも満たない。
投手出身の監督は日米ともに少なく、プロ野球は日本一に輝いたソフトバンクの工藤公康監督ひとり。メジャーでもナショナルズ監督への就任が報道されたブラック氏など3人しかいない(ドジャースのみ来季監督が未定)。工藤監督が通算224勝を挙げた名投手だが、メジャーの3人はブラック監督が121勝、レッドソックス・ファレル監督が36勝、レッズ・プライス監督がメジャー登板なしという実績だ。
メジャーでは「現役時代の実績」と「監督としての手腕」は別物との考え方が根強く、監督になるには引退後マイナーのコーチから出発するなど、指導者としての下積みをしっかり経て就任することがほとんどだ。そんな中、現役時代にマッティングリー監督以上の実績を残した監督がいる。
今季就任1年目でツインズを5年ぶりのシーズン勝ち越しに導いたモリター監督だ。現役時代はメジャー歴代9位の3319安打を記録するなど、三拍子そろった活躍を見せ殿堂入りも果たしている。1998年に現役を引退後、ツインズのベンチコーチを務めるなど指導者としての実績を重ね58歳で念願のメジャー監督に就いた。そして昨季まで4年連続でシーズン90敗以上を喫していたチームを率い、終盤までプレーオフ争いに参加。最終的には83勝79敗でシーズンを終えた。
モリター監督の今後の活躍次第では、メジャーでもプロ野球のように“名選手→監督”という道筋も増えるかもしれない。一方プロ野球ではセ・リーグの3新監督のように下積みを経ずにいきなり監督に就任するというケースが増えていくのだろうか。3人の来季の手腕にも注目しつつ、5年後、10年後の各球団の監督を想像するのも面白いだろう。