沢村賞は、先発完投型に限った賞
日本プロ野球では投手を称える賞として沢村栄治賞がある。25登板以上、10完投以上、15勝以上、勝率6割以上、200投球回以上、150奪三振以上、防御率2.50以下。以上7項目を選考基準に、選考委員によって選ばれる。
今年は、7項目のうち10完投以外の6項目を満たした広島の前田健太が自身2度目の受賞を果たした。投手なら誰もが一度は獲りたいと思う賞である一方で、近年は投手の分業制が確立したこともあり、対象が先発完投型に限られている点がしばしば議論になることもある。
そこで、防御率や勝利数などのデータ以外から今年優れた成績を残した先発とリリーフを見てみよう。参考にするのは、野球のデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える「セイバーメトリクス」。映画『マネーボール』などをきっかけに日本でも触れる機会が増えてきた。
まずは、先発投手から。
先発し6イニング以上を投げ、自責点を3以内に抑えた割合を示すQS%。クオリティースタートと聞いたことがある人も多いだろう。セ・リーグのトップは、広島の前田健太で89.7%。26試合に先発し、QSを達成できなかったのは3試合しかなかった。先発し5イニング未満で降板した試合も2試合しかなかったあたりはさすがだ。パ・リーグのトップは、オリックスの西勇輝で83.3%。勝ち星は10勝に終わったものの、先発として安定感があったといえる。
圧倒的な数値を残したソフトバンクのサファテ
続いてはWHIP。被安打と与四球を足し、それを投球回で割ったもので、1イニングに何人の走者を出したかを表す。
セ・リーグの規定投球回に達した投手では、巨人のマイコラスが0.90でトップ。パ・リーグでは日本ハムの大谷翔平が0.91でトップだった。両リーグでWHIPが1.00を切ったのは、このふたりしかいなかった。
セ・リーグのリリーフでは、DeNAの山崎康晃が0.87。ヤクルトのバーネットが0.89と優秀な数値を残している。中日の岡田俊哉は50試合に登板し12ホールドだったが、WHIPは0.92と安定した数値を残した。
パ・リーグのリリーフでは、ソフトバンクのサファテが0.63と圧倒的な数値を記録した。チームメートの五十嵐亮太が0.88、楽天の松井裕樹も0.90と優秀な数値を残しているがサファテの前では霞んでしまう。
最後に、リーグ平均の失点率と選手個人の失点率を比較し、どれくらい失点を防いでいるかを示すRSAAを見てみよう。
セ・リーグの規定投球回に達した投手では広島のジョンソンが35.43でトップ。前田健太が34.27で続く。リリーフでは巨人の澤村拓一が15.58でトップ。バーネットが15.29で続く。
パ・リーグの規定投球回に達した投手では大谷翔平が30.67でトップ。西勇輝が25.55で続く。リリーフでは、松井裕樹が24.82でトップ。サファテが20.45で続く。
野球は数字で楽しめるスポーツともいわれる。シーズンが終わり、こうして改めて数字で見ていくことで、選手の凄さが浮き彫りになる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)