ひとりの選手だけで打線を構成したら何点入るかという指標
野球のデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える「セイバーメトリクス」。映画『マネーボール』などをきっかけに、日本でも触れる機会が増えてきたが、今回はセイバーメトリクスの指標のひとつであるRC27(Runs Created per 27 outs)を用いて、セ・パ両リーグのベストな野手(投手は除く)を選んでみたい。
RC27とは、どういった指標か? 選手の活躍を得点に貢献した値、「得点貢献値」として評価する指標にRCというものがある。1シーズンで、その選手がどれだけの得点を生み出したかを表し、各選手のRCをすべて足すと、そのチームの総得点とほぼ同じ数値になる。そのRCを元に、その選手ひとりだけで打線を構成した場合に1試合で何点挙げられるかを表したのがRC27だ。例えば、1番から9番まで山田哲人が打ったら、何点入るかということを統計学的に表すのである。つまり、RC27のベストナインは、攻撃力に長けたオールスターとも言える。
毎年、一般的に発表されるセ・パのベストナインは、外野手のポジション関係なく選ばれるが、このコラムではレフト、センター、ライトを分けて選ぶこととした。外野の複数のポジションを守る選手もいるが、シーズンで最も多く守ったポジションを基本とする。
以下がポジション別に見たセ・パのベストな野手たち。まずは、パ・リーグから(選手、球団名のあとの数字は、その選手のRC27)
捕手 炭谷銀仁朗(西武) 1.96
一塁手 中田翔(日本ハム) 5.70
二塁手 浅村栄斗(西武) 4.91
三塁手 中村剛也(西武) 7.13
遊撃手 鈴木大地(ロッテ) 3.97
左翼手 西川遥輝(日本ハム) 5.70
中堅手 柳田悠岐(ソフトバンク) 11.39
右翼手 清田育宏(ロッテ) 7.10
指名打者 ペーニャ(楽天) 6.68
トリプルスリーを達成したソフトバンク・柳田の11.39はセ・パ両リーグでダントツ。柳田とポジションが重なり、今回のなかには入らなかったが、シーズン安打の日本記録を達成した秋山翔吾(西武)のRC27はパ・リーグ2位の8.04である。
また、捕手として52試合、指名打者で66試合にスタメン出場した近藤健介(日本ハム)のRC27は、リーグ3位の7.20だった。
目立つレギュラー捕手の不在と遊撃手の攻撃力低下
【セ・リーグ】
捕手 中村悠平(ヤクルト) 2.70
一塁手 ロペス(DeNA) 5.96
二塁手 山田哲人(ヤクルト) 9.56
三塁手 川端慎吾(ヤクルト) 6.20
遊撃手 鳥谷敬(阪神) 5.42
左翼手 筒香嘉智(DeNA) 8.00
中堅手 丸佳浩(広島) 5.56
右翼手 平田良介(中日) 5.92
山田の9.56は、セ・リーグトップ。柳田ほどではないが、トリプルスリーの凄さをRC27でも証明した形になる。ポジションが重なったために外れた選手では、福留孝介(阪神)や畠山和洋(ヤクルト)が5.76、ルナ(中日)が5.42と高い数値を残した。
セ・パ共通して言えるのは、捕手を固定できないチームが多かったことだ。パは炭谷、セは中村とひとりずつしか規定打席に達しなかった。捕手は下位を打つことが多いとはいえ、少々寂しい。
また、遊撃手の攻撃力低下も目立つ。もともと、遊撃手は守りを重視されがちだが、パ・リーグのRC27ワースト5人のうち、中島卓也(日本ハム3.86)、安達了一(オリックス3.28)、後藤光尊(楽天2.80)、今宮健太(ソフトバンク2.63)と主に遊撃を守った選手が4人もいる。セ・リーグも鳥谷と坂本勇人(巨人5.27)が目立つくらいだ。
逆に考えれば、攻撃力のある遊撃手が出てくればチームの攻撃力も上がると考えられ、来季はそのあたりに注目してもいいだろう。
文=京都純典(みやこ・すみのり)