ウインターミーティングの最終日に行われる
MLBのオフシーズン最大のイベント、ウインターミーティング。MLBの30チームすべてと150以上のマイナーリーグのチームの代表がリーグの運営や球団間のトレードなどのために召集され、4日間に渡り開かれる。日本を含めた、さまざまな国からの来訪者もいて、就職案内が行われるなど“野球ビジネスの祭典”ともいえるイベントである。
今年はテネシー州ナッシュビルで行われたウインターミーティングだが、その最終日にルール・ファイブ・ドラフトというものが行われる。MLB規約の第5条に規定されていることからそう呼ばれるようになったルール・ファイブ・ドラフトは、一言でいえば有望な選手の飼い殺しを防ぐ目的で導入された。
おおまかなルールは以下の通り。
・40人のメジャー登録枠に空きがあるチームだけが参加でき、そのシーズンの優先権があるリーグでレギュラーシーズンの勝率が低いチームから指名権が与えられる。
・指名できるのはマイナー契約の選手のみ。18歳以下で入団した選手のうち、在籍年数が5年未満の選手は指名できない(19歳以上で入団した選手は4年未満)。
・AAA(トリプルA)から指名した場合は、相手チームに50000ドルを支払わなければならない。また、指名した選手は翌シーズンの全期間、出場選手25人枠に入れなければならず、枠から外す場合は元のチームに選手を戻さなければならない。ただし、元のチームが選手の返還を望まない場合、その選手はウェーバー公示される。
日本でもルール・ファイブ・ドラフトを導入してみては?
ルール・ファイブ・ドラフトのポイントは、獲得した選手はメジャーの試合で起用しなければならないという点だ。そうなれば当然、安易に指名するわけにはいかず、フロントの眼力が問われる。一方で、ほかのチームにいけばチャンスがあると思われる選手には、大きな転換期にもなる。実際、ルール・ファイブ・ドラフトで指名されたことをきっかけに、メジャーで活躍するようになった選手も多い。
ほかのチームにいけばチャンスがあるといった点は、日本のプロ野球だって同様だ。確固たるレギュラーとポジションが重なるため、一軍での出場機会がなかなか巡ってこない選手がチームを変えたら一軍で多く出場できるようになった例は数えきれないほどある。
昨季オフ、ソフトバンクの育成選手として3年間在籍した亀沢恭平は、規約に則り自由契約公示された。ソフトバンクは育成選手として再契約する方向だったが、中日が支配下登録選手としてオファーを出し、亀沢はそれを承諾した。亀沢は開幕一軍を勝ち取り、106試合に出場し打率.269と期待に応えた。亀澤の活躍に触発されたのか、このオフに白根尚貴がソフトバンクとの育成契約を断り、トライアウトの末にDeNAと支配下契約を結んだ。言うならば、自らルール・ファイブ・ドラフトに名乗りを上げたのだ。
亀沢や白根のようなケースは今後も出てくると予想される。それならば、日本でもルール・ファイブ・ドラフトを導入してみてはどうだろうか。
高卒なら5年未満、大卒・社会人なら3年未満は指名できない。各球団はある程度の人数をプロテクトできる。一軍通算出場30試合未満の選手に限るなど、日本独自のルールを設ければ、若手選手のチャンスを広げる日本流のルール・ファイブ・ドラフトができるのではないだろうか。
少ないチャンスをつかんでこそプロ、という意見もあるだろうが、まったくチャンスを得ないままユニフォームを脱ぐ選手だっている。そういった選手を増やさず、若い芽が出てくる場所を作るのもプロ野球の活性化につながるのではないだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)