二塁でのUZRはマイナスだったクルーズ
ロッテから残留要請を受けていたものの、条件面で折り合わず退団したルイス・クルーズが、巨人と年俸約2億4200万円プラス出来高の2年契約を結んだ。今季のクルーズは、打率こそ.255だったが16本塁打とパンチ力を発揮し、二塁の守備でも華麗なグラブさばきを随所に見せ、ゴールデングラブ賞を獲得した。
そのクルーズの加入は、巨人にどのような効果をもたらすだろうか。攻守両面で見ていく。
まずは、守備。選手の守備能力を示す指標のひとつにUZR(※1)というものがあるのだが、クルーズの二塁でのUZRは約-4とゴールデングラブ賞を獲得したものの実は高くなかった。数字の上では、浅村栄斗(西武)や藤田一也(楽天)のほうが高かったのである。日本人選手には真似できない曲芸のようなグラブさばきを見せる一方で、つまらないミスが多かったのも確かだ。
ちなみに、巨人の二塁には片岡治大がいる。今季、片岡のUZRは現役最高の二塁手ともいわれる菊池涼介(広島)と比べてもそん色ない数字が残っている。
クルーズを獲得した際、巨人のフロントは「三塁で起用する方向」とコメントを残したが、数字の面から考えてもそのほうがいいだろう。来日してからのクルーズの三塁経験は、2014年に12試合でスタメン出場しただけだが、アメリカ時代は三塁での起用が多かった。しかも、三塁でのUZRで非常に高い数字を残している。村田修一や、若手の有望株岡本和真にも刺激になるだろう。
二塁・片岡、三塁・クルーズに加え、遊撃手の坂本勇人もリーグトップのUZRを残しており、巨人の内野守備がより強固になるのではないだろうか。坂本に何かあったときのために、遊撃を任せられるのも大きなプラスだ。
東京ドームを本拠地にすることで本塁打が増える
次に、打撃面を見てみよう。ロッテでの2年でクルーズは通算打率.247、32本塁打、134打点という成績を残している。打率が低いこと以外に、2年で選んだ四球が42個しかなく、出塁率も.279と低いのは気になる。出塁面より一発長打を期待したほうがよさそうだが、その長打が増える可能性がある。
今季、クルーズの凡打の詳細を見るとゴロアウトが92でフライアウトが215とフライのほうが圧倒的に多い。ゴロアウトとフライアウトの割合を見るGO/AO(※2)は、0.43と典型的なフライヒッターだ。QVCマリンフィールドは、風の影響を受けやすく高く上がったホームラン性の打球が風で押し戻されることが多々ある。一方、東京ドームは当然のことだが風の影響は受けない。フラフラとあがったフライがそのままスタンドインする可能性は、QVCマリンフィールドより増える可能性が高くなる。
今季の巨人はリーグ4位の98本塁打、二塁打と三塁打の合計はリーグ最少の206本と一時期のように一発長打で得点をあげることが少なかった。長打も打てるクルーズの加入はプラスになるだろう。相手から見ても、たとえ打率が.250前後でも20~30本塁打打てる打者が下位打線にいたら嫌なはずだ。
攻守両面から見ても、高橋由伸新監督の下、リーグ優勝奪還を目指す巨人にとって大きな補強となったと見ることができる。
(※1)UZR
リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べ、守備でどれだけ失点を防いだかを表す指標。グラウンドを多数のゾーンに区分し、各ゾーンに飛んだ打球の種類(バント、ゴロ、ライナー、フライ)や打球速度を記録する。そして、各ゾーンにおいて生じた打球をリーグ全体でどれだけアウトにしたかを算出する。このデータを基に、各選手のプレーを評価する。
(※2)GO/AO
ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロとフライの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライの割合が高い打者となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)